【特別企画】大手各社の化粧品事業戦略に迫る[10] ファンケル化粧品を設立、米ボウシャを柱に国際戦略を強化

2013.07.22

特集

編集部

ファンケル化粧品を設立、米ボウシャを柱に国際戦略を強化

自然派化粧品を標榜するファンケルは、2014年4月からの持株会社制度への移行に伴い、化粧品事業を新たに株式会社ファンケル化粧品が中核となって推進する。また、関連会社でスキンケアを中心に小売販売する米国ボウシャに資金投下を行い、第3のブランドとして国際戦略を強化する。

持株会社制度の移行による新組織体制は、化粧品事業を行う株式会社ファンケル化粧品と健康食品事業を行う株式会社ファンケルヘルスサイエンス及び通販会社・株式会社アテ二アやニコスタービューテック株式会社など既存グループ会社で構成する。

新設した株式会社ファンケル化粧品の社長には、山岡美奈子氏が就任、社員99名(予定)で事業を始める。化粧品事業は、2013年3月期で売上高329億8000万にのぼる。販売チャネルの売り上げ構成比率は、通販60%、直営40%の割合。

今年度の化粧品事業強化策として卸に力点を置いた流通分野の強化を図る。今年3月に総合研究所に新設した流通OEM商品開発室で化粧品のプライベートブランド(PB)、相手先ブランド商品(OEM)の開発を強化。すでにセブンイレブンジャパンやマツキヨ、ローソンなどと提携交渉を始めておりドラッグストア、スーパーなどの店頭販売で、卸の売り上げ比率を現在の10%から33後に30%台にまで引き上げる計画だ。

同研究所に流通OEM商品開発室と同時期に新設したパーソナルコスメ開発室は、皮膚科専門医との共同研究によるアトピー性皮膚炎など皮膚生理機能改善を図った顧客対応化粧品(オンリ―ユーコスメ)の開発に力を入れ、3年後にも市場投入する方針だ。

化粧品事業の効率化にも取り組む。今年6月末現在、全国に174ある直営店を150店に縮小するなど店舗の適正化を図る。さらに、化粧品の通販事業を行うアテ二アについては、前期で新規客数が対前年比45%と大幅な伸びを示したものの、減収に陥ったことから経営の抜本的見直しを行い、通販事業の立て直しをゼロから作り上げ、第2のブランドとして擁立していく。

一方、化粧品の海外事業については、関係会社で米国ボウシャに資金を投下して成長を加速させ、第3のブランドとして育成する。

現在、ボウシャは、世界屈指の小売専門企業米セフォラ社の小売ルートを通じて米国内やカナダ、メキシコ、シンガポール、マレーシアなどで植物由来のスキンケアをボウシャブランドで販売。年商は、20億円ベースで利益も出ている状態。ここへきて現地での生産を始めた。今後、セフォラとの関係を強化しながら中国、南アフリカなどに進出し、グローバル化を加速させる。将来は、日本への逆輸入も検討するほか連結子会社とする方針。

こうした一連の化粧品新会社設立や化粧品事業の効率化、海外事業など収益構造に一定のメドを付けて今年9月までにも今期(2014年3月期)の化粧品事業を含む業績見通しや事業計画を明らかにする考えだ。

 

独自の安全性評価基準を設けて無添加化粧品開発を実践

ファンケル執行役員社長室長・松本浩一氏

株式会社ファンケル 執行役員 社長室長 松本浩一

 ―流通分野の強化としてドラッグストア、総合スーパー各社などとの話し合いは、どの程度まで進んでいますか

「化粧品、健康食品ともに流通分野での本格成長を目指すことを基本に現在、大手ドラッグストアや大手スーパー、コンビニ各社などとどのようなPB、OEM商品を望んでいるか、鋭意、交渉を始めています。当社にとって流通各社のチャネルを活用することで販路が拡大し半面、流通各社も自社・OEMブランドの化粧品販売による新たな収益効果が期待できるなど双方にとってメリットが生じます。今期中には、当社の無添加技術を生かしたPB、OEM商品を投入したいと考えています。」

 ―今年度の新製品投入計画は

「今年6月に5年ぶりにリニュアール化し夏以降、海外でも順次、販売予定の洗顔パウダー以外、新製品投入は考えていません。また、夏と冬限定の美白、UVカットなど4アイテムをラインアップしたホワイトニングキットを限定販売し、皮膚生理学、メーキャップ技術、接客技術などの専門知識教育を受けた店舗スタッフを通じて顧客獲得に繋げていく考えです。」

 ―化粧品の品質・信頼性保証をどの様に進めていますか

「当社は、ファンケルセフティースタンダード(SFF)と呼ぶ安全性評価基準を設けています。原材料のアレルギー成分を除外し、3次元皮膚モデルなどを使った原材料の安全性試験、試作処方の安全性試験などを実施して無添加化粧品の開発を実現しています。また、ヤッホーシステムと名付けたデータベースを構築し経営トップ、役員、全社員が顧客の声を管理・分析しながら情報の共有化を図っています」

 ―男女や国籍などを問わず多様な人材を活用・登用するダイバーシティの推進策は

「私も含めて今年3月に執行役員に就いたのが10名で、この内、女性執行役員が4名います。その中で女性のトップは専務に就いています。また、ビューティーカンパニーの従業員数は約100名で、女性の比率が72%を占めています。管理者23名の内、9名が女性です。女性の視点は、企業の業績に直結するという現会長の考えを醸成したものと言えます。」

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