【連載】化粧品が起こすイノベーション・この技術に注目㉖紫外線カット処方技術(中)

2020.06.23

特集

編集部

株式会社サティス製薬(埼玉県吉川市)は、皮膚のエイジングに影響を与える紫外線波長域を植物由来(菜種由来)ポリマーでUVカットする技術を新規開発した。
天然素材の性能を持ったUVカットを実現するため、①UV-Aの全域へのカット効果②長時間持続するカット効果の新製剤開発に着手。その結果、UV-A全域の長時間カットにおける性能を持った天然由来の原料を調査したところ、菜種由来のポリマーから必要性能を見出して製剤の開発に繋げた。

同社は、UV-A全域をきちんとカットするためには、UV-A(320~350nm)だけでなく、ロングUV-A領域(350nm以上)もカットできる技術を開発するため、ロングUV-Aまでカットが可能な天然鉱物を菜種由来ポリマーと混和して製剤化したところ、紫外線吸収剤(ケミカル)を用いた比較品と同等のロングUV-Aカット効果を得ることを可能とした。しかし、UVカット効果を長時間持続させるためには①皮膚親和性(皮膚にしっかりと馴染んでフィットする性能)②耐水性(皮膚分泌物によりフィットが崩れない性能 )③再乳化性(使用後に洗浄が容易に出来る性能)3条件が必要となった 。

同社が見つけた菜種由来のポリマーは、各種試験・検証を行ったところ3条件をクリア。同時に、人工皮革を用いて被膜形成成分の耐水性試験を行ったところ菜種由来ポリマーの被膜形成成分が合成ポリマーと同等の耐水性があることが分った。また、モニターでの実用試験にて総合的な持続能を検証した結果、使用後にカバーされたシミの数が7時間を経過した時点においても8割以上カバーしていることを確認するなど、菜種由来ポリマーの長時間効能持続が明らかになった。

こうした紫外線吸収剤フリー(ノンケミカル)のUVカット製剤は、これまで、塗布後に「白浮き」が生じ、肌の外観を損なわせてしまうこと。また、仕上がりが粉っぽく乾燥を感じるという懸念があった。
同社では、開発した高性能UVカット製剤が白浮きのない乾燥を感じることが無い処方設計を実現したことで、サンプル提供を開始している。また、使用感に優れた高性能UV カット製剤のOEM 供給を開始している。

しかし、女性が悩む「エイジング作用」は、UV-BではなくUV-Aにより引き起こされている。UV-Aをカットする技術はまだ歴史が浅く、UV-A波長全体を広範囲にカットすることは簡単ではない状況にある。特に、350nmを超える“ロングUV-A”と呼ばれる波長域については、カットできる技術はまだ少ないのが現状。ちなみにロングUV-Aは、UV-A全体量の実に75%を占めており、地表に届くUV-AのほとんどはロングUV-Aといわれる。

女性のエイジングに関する悩みが減らないのは、UV-Aを広範囲にきちんとカットできていない事に原因があり、引き続きUVカット製品のニーズは旺盛だ。

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