【連載】大手化粧品会社の研究⑮花王・カネボウ化粧品の会社研究 ~花王・カネボウを4千百億円で買収、白斑問題等で化粧品事業ブレーキ~(上)

2018.04.4

特集

編集部

花王株式会社(東京都中央区)が化粧品事業に参入したのは1982年のこと。花王が絶頂期にあった1980年代に洗濯洗剤「アタック」、洗顔料「ビオレ」、入浴剤「バブ」、紙おむつ「メリーズ」など同社を代表する数多くのロングセラー商品をうみだす中、その余勢を駆って化粧品分野に参入した。その勢いに乗り、一挙に大手ライバルを追い越そうと食指を伸ばしたのが経営不振に陥っていたカネボウの買収であった。
産業再生機構の支援下で再建を目指していたカネボウを2006年2月に4100億円で買収し手中に収めた。
当時でさえも〝高い買い物〟という指摘も少なくなかったこの買収劇になぜ花王が食指を伸ばしたのか。その理由は、化粧品事業の強化であった。対東南アジアなど将来的にポテンシャルが高い化粧品事業の強化は、花王にとって至上命題となっていた。
そこに降って湧いたのがカネボウ化粧品の売却。花王のブランド力に「カネボウ」ブランドが加われば「ライバル化粧品各社の背中が見えてくる」として買収に踏み切った。

だが、カネボウを手中に収めたとはいえ、花王の化粧品事業は苦難を余儀なくされた。花王の化粧品事業売り上げは、カネボウ化粧品の売上高を連結化した2007年3月期をピークに2008年3月期業績は、横ばいで推移。2009年3月期は、リーマンショックで売上高が前期比8.0%減の2908億円、営業利益が185億円の赤字となった。2010年3月期は、売上高が前期比8.8%減の2651億円とさらに減少し、営業利益の赤字幅は302億円に膨らんだ。以降も業績は低迷し、カネボウ化粧品との相乗効果による化粧品事業の成長をたどる状況ではなかった。しかも、買収したカネボウ化粧品の事業・組織改革を手つかずの状態で先送りした。

そのツケが回ってきたのが、2013年7月に発覚した「白斑問題」だ。カネボウが開発した美白成分ロドデノールは、メラニンの生成を抑制してシミ・そばかすの原因を防ぐという作用がある。その効果については、2008年に厚生労働省から医薬部外品として承認を受けている。
この社会問題化した不祥事件でカネボウのブランド力は、完全に地に墜ち、買収による相乗効果による化粧品事業の成長路線どころではなくなった。
白斑問題の発覚から5年を経過した現在でも、企業の製造物責任として厚生労働省と連携しながら原因究明と被害者の治療等に対応している状況が続いている。

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