【連載】化粧特許と知的財産権②ファンペップ、知財戦略、防衛の意味合い強い(下)

2019.05.17

特集

編集部

ファンペップは、抗体誘導ペプチドや化粧品原料等の機能性ペプチドの研究開発を継続して取り組むためには、事業資金や研究開発資金等の確保は避けて通れない経営上の課題となっている。

同社は、機能性ペプチドの開発や実用化、販売に関するライセンス契約や提携契約、共同研究契約を化粧品会社、製薬会社、医療関連会社等と締結し、契約に伴う一時金、研究開発支援金、マイルストン収入等を得て事業資金、開発資金等に充当してきた。しかし、抗体誘導ペプチドや化粧品原料等の機能性ペプチドの研究開発を継続して取り組むためには、研究開発資金の確保は避けて通れない経営課題となっていた。そこで同社は、第三者割当増資等を実施し、資金調達を行なった。

同社は、2015年11月に国立研究開発法人科学技術振興機構を引受先とする第三者割当増資(増資額非公表)を実施した。今回の資金調達は、科学技術振興機構の出資型新事業創出支援プログラムに基づくもの。
調達した資金は、大阪大学発の機能性ペプチド等に関する技術シーズの研究開発資金に充当し、医薬品、医療機器及び化粧品等の幅広い分野での実用化に充当した。
2018年10月には、業務提携先の事業会社及びベンチャーキャピタルを引受先とする第三者割当増資を実施し、総額約4億6000万円の資金調達を行った。
今回の資金調達は、知財権の有効活用による抗体誘導ペプチド等の機能性ペプチドの研究開発パイプラインを進展・拡充させ、企業価値の更なる向上に努める狙い。
引受先は、塩野義製薬株式会社(大阪府大阪市)、大日本住友製薬株式会社(大阪府大阪市)、株式会社ファンケル(神奈川県横浜市)、株式会社メディパルホールディングス(東京都中央区)、森下仁丹株式会社(東京都千代田区)、 バイオ・サイト・キャピタル株式会社(大阪府大阪市)、バイオ・サイト・スタート投資事業有限責任組合(運営者・バイオ・サイト・キャピタル)、 みずほ成長支援投資事業有限責任組合(運営者・みずほキャピタル)の8社。

ともあれ、同社の知財戦略は、化粧品、医薬品とも防衛の意味合いが強い。ベンチャー企業では広範囲に大量の特許を張り巡らせて参入障壁を高める大企業のような戦略をとることは難しい。そこで同社は、限られたコストであっても知財活動を最大限に効率化させていくために、勝てる知財の特定とスピーディーな出願を重視している。
ベンチャー企業ならではのスピード感のある研究開発や研究者・知財部門が一体となった意思決定を活かし、いち早く新製品を開発してマーケットを勝ち取るマーケットオリエンテッドの戦略を展開する。
研究開発投資がかさむ中、医薬品の開発に医療機器および化粧品の事業を加えた平成30年の売り上げは約13億円、社員14人と小さなベンチャーだが上場の呼び声が高い。今後の動向が注目される。

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