【連載】化粧品・美容関連ベンチャー企業の成長軌跡【31】丸海きあら① ~沖縄産植物の月桃を美容アイテムに活用~

2016.11.17

特集

編集部

無題株式会社丸海きあら(沖縄県国頭郡、社長 山川美代子氏)は、沖縄産出の植物「月桃」(げっとう=写真)の搾汁液を化粧品の成分として開発して商品化を図るなど、かつての養豚業から事業転換(2009年)を図り化粧品メーカーに大きく変貌を遂げている。

ショウガ科に属する植物月桃は、花が唇形で帯黄白色、紅色の条線がある。果実は長さ2cm程度で球卵形をしている。初夏には、白い花が咲き、秋になるとその花が赤い実になる。濃緑色の葉には、独特の芳香がある。

沖縄では、日常生活の中で、月桃を余すところなく利用してきた。茎は、サトウキビの結束剤として使用。現在では、紙の原料として使われている。月桃の葉は、お茶としても愛用されている。

最近の月桃の研究では、月桃の医療・化粧品としての効果が明らかになっている。月桃の葉の製油成分は、強力な抗菌作用で肌を引き締め、新陳代謝を高めるとともに肌を活性化させてシミ・シワを改善することが報告されている。また、月桃成分には、老化や生活習慣病の原因である「活性酸素」を除去するポリフェノールも多く含まれていることも判明している。

同社は、こうした月桃の機能性、成分の特徴などに着目し、医療、美容アイテムとして活用することを決め丁度、養豚事業の先行きに不安を感じていたこともあり事業の転換を決断(2000年)した。
最初に手掛けたのは養豚事業で培った汚水処理技術を活用して、月桃からエキスを抽出する搾汁機の開発。搾汁機は、月桃が持つ高酸化力や殺菌力を引き出し、水を一切使わない純度100%の月桃水を実現できる。
また、月桃の搾汁液蒸留工程は
①葉と茎を切り分け、茎を自社開発の特許搾汁機で搾り、搾汁を蒸留釜の底に入れ、その上にアミを置き、葉をのせ、蓋をして、コンロに火をつける。茎の搾汁液蒸気で葉を蒸し、葉の揮発性の香気成分が茎の搾汁液と共に蒸気となり、冷却装置で冷やされ、2層の液体に戻る
②上層は月桃精油、下層は、水の入らない搾汁蒸留液となる
③搾汁液蒸留法で精製された蒸留液は、長期保存ができ、茎の香り成分も含まれる

これまでほとんどの月桃商品が、蒸留の工程段階で水を使用する水蒸気蒸留法(フローラルウォーター)が採用されていたことから、月桃の高純度や機能性を引き出すことが出来なかった。

同社が搾汁液蒸留法と呼ぶ月桃の搾汁製造方法を確立したことで、2006年から本格的に化粧品製造に乗り出すとともに、JAS認定の自社地で有機農法栽培乗り出した。また、搾汁液蒸留法についての機械と全工程に関わる特許(脱水機、固液分離機、植物精油抽出法、月桃蒸留製造法等7件)は、2012年4月に取得し、権利化している。

月桃の化粧成分開発と化粧品への応用、養豚事業からの経営革新による新規事業への取り組みなどベンチャーとしての変貌に県民からの視線は熱い。

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