【連載】大手化粧品会社の研究(74)クレコスの会社研究 ~クオンプロジェクト推進、唐津・コスメバレーに進出~(下)

2019.01.29

特集

編集部

クレコスは、これまで行ってきた「社会事業」と「営利事業」を一体化した「クオンプロジェクト」に取り組んでいる。同プロジェクトは、化粧品事業を通じて農業再生や福祉雇用、森林保全等に取り組むことで、会社やステークホルダーの利益に繋げるもの。
農業再生は、奈良・大和高原で広がる耕作放棄地を「自然農」で再生する健一自然農園と連携し、自然農栽培の大和茶を化粧品の成分として活用している。また、福祉雇用は、障がいのある人が働く支援施設で植物素材からウォーターを蒸留して化粧品に配合。同時に、支援施設のオリジナル商品をプロデュースし、障がいのある人の雇用と自立を支援している。化粧品ブランド「クオン」のパッケージは、社会福祉法人で働く障害者の手漉きによって製紙された紙を使用。また、クレコス製品の容器は、環境保護や省資源に配慮したリサイクル対応パッケージとなっている。

こうした中、同社は、国内外の化粧品産業を誘致して化粧品技術の集積や化粧品産業の振興を図る唐津コスメティック構想に基づく一大集積地「唐津コスメティックバレー」に進出した。
同社は、平成29年3月に佐賀県唐津市と地産素材活用連携および進出協定を締結。これに伴い唐津市は、地方創生拠点整備交付金や地方創生推進交付金を活用して唐津市石志に所在していた旧唐津市ペットボトルセンターを改装し、原料加工機能と化粧品製造機能を持ち合わせた施設を工場として整備した上でクレコスに賃借。
クレコスは、2019年1月から工場を賃借して地元農産物を利用した化粧品原料の開発や自社ブランド化粧品「クオン」の製造・販売を始めた。

同社が唐津に進出したのは、輸出入を手掛ける化粧品検査会社や物流会社などがあり、今後もコスメの集積地として期待できるとの判断による。
唐津コスメティックバレーは、世界最大の化粧品産業集積地フランスの「コスメティックバレー」を模倣して2013年11月に産学官連携組織「ジャパン・コスメティックセンター」(JCC)を組織化して活動を始めた。以来、現在では、JCCの会員が204団体に上り、ミカンの花やつばき油など唐津・玄海地区を中心に50品目の県産農産品や植物が化粧品の原料等に使われた。また、企業誘致や起業支援にも力を入れ、この5年間に21社がコスメバレーに進出または起業している。

JCCでは、課題となっている販促について地元農産品を使った化粧品を開発した企業と小売店や消費者をつなぐ商談会・イベント等を積極的に開催して販路の拡大に努めている。

#

↑