痛くない、苦しくない粒子線がん治療、保険医療への転換急務

最新商品

2013.08.30

編集部

痛くない、苦しくないがん治療が実現した。外科的手術が不要でピンポイントに腫瘍組織を破壊し、副作用が少ない治療法「粒子線治療」が実用化され、全国13の国公立病院で治療が始まった。しかし、高額医療がネックで、経済的な余裕のある人でなければ治療が受けづらい。保険会社とがん特約を結べば高額医療費の負担も少なくなるが、公的保険で誰でも受けられる保険医療が待ったなしだ。

粒子線治療は「重粒子線」と「陽子線」の2種類の放射線を使う治療方法。粒子線は、放射エネルギーに応じて一定の深さで停止し、その直前で線量が最大となる物理的性質を持つ。この特性を生かした粒子線装置で、照射する位置を調整しながら病巣部分のみにエネルギーをピンポイントで照射することで、がん細胞を破壊し、正常組織に副作用を与えずに治療ができる。現在の放射線治療に比べてより確実に腫瘍組織を破壊し、正常組織の照射線量が少なくて済むため、痛みがなく苦しみのないガン治療として脚光を集めている。

陽子線と重粒子線の違いは、腫瘍細胞の殺傷効果。重粒子線の方が陽子線の2~3倍の殺傷効果がある。しかし、装置や稼働施設にかかる費用が、重粒子線で約120億円、陽子線が約80億円といずれも高く装置も大掛かりになる。

陽子線治療_静岡県立大病院現在、重粒子線治療を行う群馬大学病院や陽子線治療を行う静岡県立大病院(写真)、福井県立病院、放射線医学総合研究所など13の国公立病院が三菱電機製、日立製の粒子線装置を導入して治療を行っている。コスト的に陽子線治療装置を導入している施設が多い。

陽子線治療の特徴の一つは、照射期間中に急性の副作用がほとんどないため原則として入院の必要がなく通常の生活を続けながら外来で治療を受けられる。だが、重粒子線治療や陽子線治療は、公的な医療保険の対象になっていないことから患者の高額費用に対する心理的負担が大きい。

13施設は、医療費の減免措置や照射回数による治療費を区分するなど患者負担に違いがある。医療費の減免措置を行っている福井県立病院の場合、照射回数が20回まで240万円、21回から25回が250万円、26回以上260万円となっている。

ここへきて13施設は、医療費の減免措置の拡大検討やがん保険会社と特約条項を交わし、患者に先進医療の特約加入促進を行うなどの対応を図っている。しかし、自治体の財政難で減免措置の拡充は厳しい状況だ。また、粒子線治療は、新しい治療法でありがん治療法として広く認知されるようになるためには、外科的手術、化学療法などに比べて治験成績が高く生活の質を維持できる科学的根拠拠(エビデンス)を一段と確立することが必要だ。

国内の粒子線医療施設

#

↑