【連載】化粧品・美容関連ベンチャー企業の成長軌跡【21】ファンペップ① ~抗菌・機能性ペプチドのライセンスを化粧品・製薬企業に供与~
2016.10.6
編集部
株式会社ファンペップ(東京都渋谷区、社長 平井昭光氏)は、大阪大学大学院医学系研究科での研究開発の成果として創出された抗菌ペプチド、機能性ペプチドなどの実用化を行う目的で設立(2013年10月)した、大学発バイオベンチャー。
同社のビジネスは、同大学での抗菌ペプチド、機能性ペプチドの研究成果の中から、実用性の高いプロダクトについて共同研究を行い、シーズをインキュベーション(起業)して実用化への橋渡しを行う。これに基づいて機能性化粧品や医療機器などを開発し、化粧品、製薬企業等とのパートナリングによりライセンス契約料、ロイヤリティ収入などを得る事業形態を敷く。
同大学で創出された抗菌ペプチドは、天然型アミノ酸で構成される合成ペプチド。細菌や真菌などに対して幅広い抗菌スペクトルを有しており、大腸菌、緑膿菌、アクネ菌、黒カビや歯周病菌などにも少量で効果を発揮する。また、院内感染等で大きな問題になっているメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)や多剤耐性アシネトバクターなどの薬剤耐性菌にも抗菌作用を発揮し、薬剤耐性菌へと変異させるリスクが少ないなど、抗菌・除菌機能が必要な幅広い商品に応用する事が可能。
抗菌ペプチドは、同大学における基礎研究を基に見出され、ファンペップが知的財産権を保有している抗菌活性を有する合成ペプチドの新素材。
2015年10月に塩野義製薬との間で機能性ペプチドについて全世界における独占研究・開発・製造・販売を行う権利に関し、ライセンス契約を締結した。
抗体誘導ペプチドについては、2016年2月に医薬品卸大手のメディパルホールディングスと提携し、糖尿病、高血圧など生活習慣病に効果のあるワクチン開発に入ったのを皮切りに、同年4月に森下仁丹との間で、同社が長年開発してきたオーラルケアやメディカルケア等のカテゴリーに属する商品に「キュアペプチン」を配合することで、より抗菌性が高く安全性に優れた商品を開発する狙いで覚書を締結した。
今年5月には、森下仁丹と共同で「食卓用除菌スプレー」と「マウスウォッシュ」(写真)を商品化し、森下仁丹が市場で販売を開始した。
「食卓用除菌スプレー」は、食卓やデスクなど雑菌が増えやすい箇所にスプレーし、ティッシュや布でふき取ることで簡単に除菌することができる。携帯サイズなので外出先でも手軽に使用可能。
「マウスウォッシュ」は、刺激が少なくマイルドな味のため、食事前でもマウスウォッシュの味残りを気にせず使用できる。口中の汚れや臭いをスッキリと落とし口臭を防ぐ。同社は現在、2製品とも通販と医科向けルートを中心販売している。さらに、今年7月には、創傷被覆材の製造技術を有する森下仁丹と提携して共同で商品化を行い、褥瘡等の治療において抗菌ペプチド配合創傷被覆材の開発に関し提携した。
直近では、今年9月に大日本製薬と抗体誘導ペプチドの共同研究契約を締結するなどペプチドの抗菌分野での共同開発に拍車をかけている。