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“冬こそUVケア”──乾燥と紫外線、二重リスクに備える肌戦略

冬は「紫外線が弱い季節」と思われがち。しかし、肌の老化を進めるUV-A波は、真冬でも地表に80%以上届いていることをご存じでしょうか。さらに、気温と湿度の低下による乾燥が重なり、肌はバリア機能が低下しやすい季節です。つまり冬は、乾燥と紫外線の“ダブルダメージ期”。本記事では、冬にこそ必要なUVケアの科学的根拠と、日常で取り入れられる具体的な肌戦略を紹介します。「冬は日差しが弱いから日焼け止めはいらない」。そう信じている人は少なくありません。しかし、実際の紫外線環境を科学的に見てみると、この考え方は肌にとってもっとも危険な誤解のひとつです。

■UV-A波は“冬でも届く”老化光線

紫外線には、主にUV-A波(長波長)とUV-B波(中波長)の2種類があります。
このうちUV-A波は波長が長く、雲やガラスを通過して真皮層にまで届くのが特徴です。
季節による変動が少なく、気象庁のデータでも12月〜2月でも年間ピーク時の約60〜80%のUV-Aが地表に降り注いでいます。

このUV-A波は、肌内部のコラーゲン・エラスチン線維を酸化させる“光老化”の主犯格。
長期的に浴び続けることで、シワ・たるみ・黄ぐすみなどを引き起こします。
一方でUV-B波は肌表面で炎症(赤みや日焼け)を起こすタイプですが、冬はB波が弱まりA波が相対的に優勢になる季節。つまり「老化は進みやすいが気づきにくい」時期なのです。

■雪と反射光による“冬特有の紫外線リスク”

さらに冬には、反射による紫外線増幅というもうひとつの落とし穴があります。
雪面は太陽光の約80〜90%を反射し、周囲からも肌に紫外線を浴びせます。
たとえばスキー場や登山地帯では、晴天時に紫外線量が最大で約1.8倍に増加するとの報告もあります。
この現象は「アルベド効果」と呼ばれ、積雪の多い地域だけでなく、白い建物が多い都市部でも同様の現象が起こります。

つまり冬の紫外線は、“上から”だけでなく“下からも”肌を照射しているのです。
頬やあごの裏など、意外な部位に日焼けや乾燥を感じる人は、この反射光が原因である可能性も高いでしょう。

■“室内紫外線”の見落としリスク

加えて、冬の在宅ワークや車通勤などで増える「室内時間」も、肌にとって完全な安全地帯ではありません。
一般的な窓ガラスはUV-Bをある程度遮断しますが、UV-A波の約75%が透過するとされています。
つまり、“窓際のデスクワークでも紫外線ダメージを受けている”ということ。

特に近年は、PC・スマートフォンなどのブルーライトによる酸化ストレスも重なり、肌内部では活性酸素(ROS)の生成が加速。
この慢性的な酸化状態が、メラニン生成や炎症を誘発し、色素沈着・くすみ・小じわの原因となります。

💡POINT:紫外線ダメージ=蓄積型リスク

紫外線による肌老化は、「その日に赤くなる」よりも「毎日の小さな蓄積」が怖い。
研究によれば、肌の老化の約80%は紫外線が原因(いわゆる“光老化”)。
冬の紫外線を防ぐことは、「見た目の若さ」を長く保つ最もコスト効率の高い美容投資なのです。

冬の肌は、外気の乾燥と室内暖房による低湿度環境で、角質層の水分保持力が著しく低下します。
その結果、皮脂膜と天然保湿因子(NMF)が減少し、肌の「バリア機能」がゆるみやすい状態に。
この弱った肌は、紫外線による炎症や酸化ストレスの影響をダイレクトに受けやすくなります。

特に、紫外線が肌細胞内で発生させる活性酸素(ROS)は、コラーゲン線維やDNAを酸化・劣化させる「サイレントエイジング」の要因です。
これにより、肌内部で慢性的な微細炎症(インフラメイジング)が起こり、ハリの低下や小ジワ、くすみを誘発します。

さらに、乾燥によってターンオーバーが遅れると、古い角質が蓄積し、メラニンの排出が滞る=シミが定着しやすい状態に。
こうして冬の肌では、“外からの攻撃(紫外線)”と“内側の再生力の低下(乾燥)”が重なり、知らず知らずのうちに「冬の隠れ老化」が進行していくのです。

また、暖房による温度差や血流低下も要注意。
体が冷えると皮膚毛細血管の循環が滞り、酸素と栄養が十分に届かなくなります。
これが続くと、代謝の鈍化→肌の再生遅延→ハリ低下という“負のスパイラル”に陥りやすくなります。

💡POINT:乾燥+紫外線=「光老化」のリスク増幅

冬は「守る力が弱まる=攻撃を受けやすい」季節。
つまり、“紫外線対策+保湿強化”をセットで行うことが冬の肌戦略の基本です。

保湿では、セラミド・ヒアルロン酸・アミノ酸など水分を抱え込む成分に加え、スクワランやホホバオイルなど水分蒸発を防ぐ油分をバランスよく組み合わせるのが理想的。
紫外線ケアでは抗酸化成分(ビタミンC誘導体、アスタキサンチン、ナイアシンアミド)を取り入れることで、酸化ダメージを分子レベルでブロックできます。

STEP1|朝のUVケアは“保湿下地一体型”で

冬の肌は乾燥で皮脂量が減り、日焼け止めがヨレやすい傾向があります。
おすすめは、セラミド・ナイアシンアミド配合のUV下地。
UVカットと保湿を同時に叶え、肌のバリアを守りながら透明感をキープします。

✔SPF30・PA+++程度で十分

✔朝のスキンケア後に「ハンドプレス」でなじませる

STEP2|日中の“リタッチUV”を習慣化

外出時や室内光でも、紫外線は肌に降り注いでいます。
最近は、ミストタイプやパウダータイプの日焼け止めが登場し、メイクの上からでも手軽に塗り直し可能。
特に、抗酸化成分(ビタミンC誘導体、フラーレンなど)を含むタイプを選ぶと、酸化ストレスの抑制にも効果的です。

STEP3|夜は“抗酸化リカバリー”でUV疲れをオフ

日中に浴びた紫外線ダメージは、夜のスキンケアで早めにリセットを。
おすすめは、レチノール・アスタキサンチン・ビタミンEなどの抗酸化美容液。
これらは、紫外線で発生した活性酸素を中和し、コラーゲン分解を防ぐ役割を果たします。

💡ワンポイント:寝室の加湿(湿度40〜60%)+水分摂取で、肌の自然修復力を最大化。

紫外線対策は“夏だけ”のものではありません。
冬の肌は、乾燥・反射光・室内光という“見えない紫外線トラップ”にさらされています。
紫外線A波(UVA)は1年中降り注ぎ、乾燥によって弱まったバリアを容易に通過。
その結果、真皮のコラーゲンをじわじわと酸化させ、気づかぬうちにハリ・透明感・弾力の貯金を削っているのです。だからこそ、冬のスキンケアで意識したいのは、「塗る=防御」と「潤す=回復」を同時に行う“ハイブリッドUVケア”。
この季節に「守りながら育てる」ケアを重ねておくことが、春先の美肌力を左右します。

🌤今日からできる冬のUVケア習慣

① 朝:保湿UV下地で「塗る保湿」
乾燥した冬の肌は、日焼け止めがムラになりやすい状態。
セラミド・ナイアシンアミド・スクワランなどのバリアサポート成分入りUV下地を使うと、
紫外線防御と水分保持を同時に叶え、1日中しっとり感をキープできます。

② 外出前:ミストUVで「光バリア」
通勤前や昼の外出時は、ミストタイプの日焼け止めを顔・首・手の甲に軽くスプレー。
乾燥でメイクが崩れやすい冬でも、うるおいを補給しながら“光のシャットダウン”が可能です。
パウダータイプよりもミストは再塗布しやすく、「ながらUVケア」に最適。

③ 夜:抗酸化美容液で「ダメージリセット」
日中に受けた紫外線ダメージは、寝ている間に修復を。
レチノール・アスタキサンチン・ビタミンC誘導体・フラーレンなどの抗酸化成分が、肌内部に残った活性酸素を中和し、コラーゲン分解や色素沈着を防ぎます。
ナイトクリームでの保湿を重ねれば、“光ダメージの後処理”が完了です。

肌の未来は、「一度のケア」ではなく「毎日の積み重ね」で決まります。
紫外線を浴びる量そのものよりも、「浴び続ける時間の長さ」が老化を左右するという報告もあります。つまり、“冬の1日”のケアが、10年後の見た目年齢を変えるのです。

日差しの弱い季節こそ、自分の肌と向き合う絶好のタイミング。
“守るだけのケア”から“育てるUVケア”へ。この冬は、「塗る」ことをあたりまえの習慣にして、春以降の透明感を先取りしましょう。「冬も塗る」ことは、“肌への防御”ではなく、“未来への投資”ともいえるでしょう。

参考文献・参考情一覧

  1. 気象庁「紫外線のデータ集/国内紫外線の状況」  https://www.data.jma.go.jp/env/ozonehp/report2009/part3.pdf
  2. The Skin Cancer Foundation “Winter Sun Protection Tips for Winter Sports Enthusiasts” (2021)https://www.skincancer.org/press/the-skin-cancer-foundation-shares-winter-sun-protection-tips/
  3. Salih H. et al., “Sunscreens: A narrative review.” Wiley Online Library, 2024https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/ski2.432
  4. 日本トリム株式会社「冬でも日焼け対策は必要?油断できない冬の紫外線」(2024)https://www.nihon-trim.co.jp/media/32600/
  5. Carore「Winter dryness & UV protection」(2022)https://carore.jp/en/blogs/column/winterdry
    ヒロクリニック「紫外線の強い季節はいつ?月別UV対策のポイント」(2025) https://www.hiro-clinic.or.jp/generio/2025/05/01/%E7%B4%AB%E5%A4%96%E7%B7%9A%E3%81%AE%E5%BC%B7%E3%81%84%E5%AD%A3%E7%AF%80%E3%81%AF%E3%81%84%E3%81%A4%EF%BC%9F%E6%9C%88%E5%88%A5uv%E5%AF%BE%E7%AD%96%E3%81%AE%E3%83%9D%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%88/
  6. AltruistSun “Why to use Sunscreen on a daily basis, even in winter” (2025)https://altruistsun.com/blogs/sunscreen/why-to-use-sunscreen-on-a-daily-basis-even-in-winter-altruist
  7. National Cancer Center Research Institute (Japan). “Ultraviolet radiation and health: from hazard identification …” PubMed (1999)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10709343/
  8. CDC (Centers for Disease Control and Prevention). “Sun Exposure in Travelers.” (2025)https://www.cdc.gov/yellow-book/hcp/environmental-hazards-risks/sun-exposure-in-travelers.html
  9. 新潟市医師会「冬も紫外線対策を」(2018)https://www.niigatashi-ishikai.or.jp/citizen/dermatology/dermatology-memo/201812271381.html
  10. J. Photochem. Photobiol. B: “Snow albedo and UV reflection intensity under winter conditions.” (2023)https://www.sciencedirect.com/journal/journal-of-photochemistry-and-photobiology-b-biology
  11. yorisou.link「季節別・月別でわかる紫外線の強さ」(2025)https://yorisou.link/news/61539/
  12. PMC (PubMed Central) “Photoprotection in Outdoor Sports: A Review of the Literature”(2022)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8850489/

Inner Beauty Award 2025 ―受賞商品発表―

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  3. 冬の“素髪ケア”革命——髪と頭皮に“スキンケア感覚”を

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