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⑰セルロースナノファイバー、化粧品用途に活路(上)

植物の細胞壁を構成するセルロースを細かくした繊維「セルロースナノファイバー」が化粧品原料として使われるなど新用途の拡大が期待されている。
セルロースナノファイバーは、主に植物の細胞壁に由来するセルロースから成り、直径数nm(ナノメートル)から100nm、長さが直径の100倍以上の繊維状物質をいう。

セルロースナノファイバーには、繊維素材として結晶化しやすく、軽量・高強度・高弾性率など多くの利点がある。重さは鋼鉄の5分の1で強度は5倍。きわめて薄い膜状に加工でき(比表面積が大きい、250平方m/g以上)、熱による変形が小さい(ガラスの約50分の1)。
セルロースナノファイバーは、パルプのような木材からだけでなく、雑草や野菜・果物の絞りかす、おから、綿製品の古布、稲わらなどさまざまなバイオマスから取り出すことができる。間伐材などの森林資源や産業廃棄物を含むさまざまな植物資源の有効活用につながり、環境負荷が小さく、持続型資源として注目されている。

植物のセルロース繊維は、細胞壁中でお互いに強く結束しており、1本1本を分離して微細化してナノファイバーを抽出するには、現在大別して2種類の方法がとられている。一つはパルプを化学処理または酵素処理してから水中で繊維を取り出す「酸化触媒による化学変性法」。もう一つは、前処理をせずにパルプを水中で直接、機械を使ってナノファイバー化する方法。
酸化触媒は、セルロース繊維どうしの結合をほぐれやすくし、均一なナノレベルの幅まで細かくして容易に取り出すことが可能。これによって、セルロースナノファイバーが新規バイオ系ナノ素材として幅広く利用されることになった。

現在、最もセルロースナノファイバーの利用で期待されているのが、化粧品分野での使用。セルロースナノファイバーを水に溶かすと、2つの特徴が現れる。一つは、粘り気(粘性)、もう一つが分散(安定性)である。
セルロースナノファイバーの粘り気や粘性は、濃度が1%以下の時に、何もせずに静止した状態では固形のジェル状になる。それを振ったり圧力を加えたりすると瞬時にサラサラの状態になる。
この特性を利用すれば、さっとスプレーできるが、肌の上ではしっかりと吸着するような基礎化粧品ができる。
例えば吹き付けるだけで定着し、しっかりと保湿できるスプレーマスクのような美容マスクも作ることが可能。
このように崩れない基礎化粧品や美容マスクなど新しい製品を生み出すポテンシャルを秘めている。

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加藤勇

顧問記者/ジャーナリスト

元日刊工業新聞編集局部長。欧州、米国特派員を含め記者歴通算45年。ベンチャー、中小・金融政策専門経済ジャーナリスト。「レバレッジ金融至上主義の崩壊」など著述多数。本誌では主に、経済部門、企業取材を担当。

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