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【12】 コラーゲンの可溶化技術を開発し保湿機能を実現~高研(下)

高研の代表的な化粧原料アテロコラーゲンは、化粧機能として高い保湿性を持つ。保湿効果の実証としてペロペプチド(塩基性アミノ酸)をアルカリ処理 したブタ、牛由来コラーゲンHを用いて肌の水分量指標「角層水付加試験」を実施し、電気伝導度法により水分測定値(コンダクタンス値)を求めた。その結 果、蒸留水と比べて約2倍の保湿効果があることを実証。同時に、ブタ由来アテロコラーゲン、ブタ由来ゼラチン、サケ由来加水分解コラーゲンをパウダーにし た後、精製水を添加して保水量を比較した。その結果、ブタ由来アテロコラーゲンがゼラチン、加水分解コラーゲンに比べて約4倍の保水力が認められた。グラ フに保湿、保水データを示す。

アテロコラーゲン

こうしたアテロコラーゲンの保湿機能を実現した技術要因として不溶性のコラーゲン線維を水に溶ける可溶化した溶液とする技術開発によるところが大きい。

動 物の皮骨などに存在する1型コラーゲンは、長さ300ナノメートル、太さ1.5ナノメートルの棒状の分子。3本のアミノ酸がアミノ酸分子のアミノ基 (NH2)とカルボキシル基(COOH)が縮合してできるペプチド結合によって直鎖状(ポリペプチド鎖)に繋がった螺旋状になった形状をしている。同時 に、1型コラーゲンは、生体内で分子の螺旋状の末端部分に鎖がほどけた形状を成しており、アミノ酸配列が異なる「テロペプチド」が存在する。このテロペプ チドを介して分子間架橋を形成し、不溶性コラーゲン繊維として水に溶けないことを解明した。

そこで、不溶性のコラーゲン繊維を水に溶ける可溶化したコラーゲン溶液とするため、タンパク質加水分解酵素で、テロペプチドの分子間架橋を切断して消化させることで、可溶化を実現した。このテロペプチドが消化したコラーゲンをアテロコラーゲンと呼ぶ。

さらに、保湿剤や化粧品の使用感を改善するため、コラーゲン分子の側鎖を化学修飾(サクシル化)し、コラーゲンのイオン点を酸性側、アルカリ側に移動させる処理を行なってコラーゲンの保湿効果や他剤との相溶性に繋げた。

一方、動物の結合組織に多く分布し、組織の伸縮、細胞機能調節に関与する弾性線維性タンパク質「エラスチン」の技術開発にも力を入れている。エラスチンは、コラーゲンと異なり分子構造が水に溶解しない疎水性側鎖構造をした中性アミノ酸から成る鎖式化合物。化粧中の油性成分との親和性やペプチド結合による水との親和性を利用して化粧品配合に応用する技術開発に取り組んでおり今後の開発成果が期待される。

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加藤勇

顧問記者/ジャーナリスト

元日刊工業新聞編集局部長。欧州、米国特派員を含め記者歴通算45年。ベンチャー、中小・金融政策専門経済ジャーナリスト。「レバレッジ金融至上主義の崩壊」など著述多数。本誌では主に、経済部門、企業取材を担当。

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