【連載】大手化粧品会社の研究(52)静岡県立大発ベンチャー、天然新素材科学研究所の会社研究 ~技術・産業の集積疑問、ステークホルダーに経営の羅針盤示せ~(下)

2018.10.2

特集

編集部

天然新素材科学研究所は、キトサンと脂肪酸が化学的に結合し、それぞれの機能を高める構造をした今までにない新しいタイプの素材(乳化剤)「エクセルキトサン」(キトサン誘導体、2015年に新成分エミールに変更)を開発し、化粧品の原料として化粧品メーカーなどに直接販売。また、2005年7月には、エミール配合のオリジナル化粧品「エミネC」としてスキンケア(乳液、石鹸、美容液、フェイスマスクなど)、ヘアケア(シャンプー、リンス、コンディショナー、パーマ液、染毛定着剤など)を商品化し通販市場に投入した。

エミーヌCスキンケアシリーズは、洗う、整える、補う、の3つのコンセプトに基づいて、ナチュナルソープ(洗う)、モイスチャーローション(整える)、リフティングエッセンス(補う、美容ジェル)を開発した。また、ヘアケアシリーズとしてコンディショニングシャンプー、ヘアーコーティングミスト(整髪料)を開発した。

同社では、スキンケアとヘアケアの共通した特徴として「うるおい感、スベスベ感を実感できる化粧品」と説く。また、ヘアケアの中で特に、ミストの特徴について「洗髪、ドライヤー、静電気などによる毛髪のダメージが少なく枝毛やきしみを緩和する効果があるほか、さらっとしてべとつかない使用感がミソ」という。
スキンケアとヘアケアの販売は、これまでの通信販売に加えて代理店販売に力を入れており、引き続き代理店の募集を行っている。

しかし、同社は、法人化して今年で約18年経過したものの、情報公開の遅れから事業の実態が必ずしも万全ではなく誰しもが理解できる事業レベルにはない。
同社は、一連の化粧品素材やキトサン誘導体活用の化粧品を開発するため、2008年度に静岡新産業集積クラスター研究開発助成事業(補助金)に応募して採択された。
同集積クラスターは、天然の植物等から機能性を持つ新素材を開発する一大集積地の形成を目指すもの。経済産業省の産業クラスター形成事業を自治体が推奨して行うことで、地域の活性化に繋げるもの。
同社が同クラスターに認定されたとはいえ、どの程度の技術が集積され合わせて産業の創出と活性化に結び付いているのか、疑問。

同社の事業実態についても具体的にどのような事業を行い、収益を上げているのか、不明確だ。
通常、法人化して7年経過すれば、販売や営業面での具体的戦略を立案し、経営の羅針盤として多くのステークホルダーに賛同を得る手段を講じるのが一般的。その意味で、具体的な戦略・戦術や将来の進路が全くみえない。今後、収益につながる経営の羅針盤「中期経営計画」を示す必要が求められよう。

#

↑