【連載】変貌する化粧品業界⑥次代の化粧品「人工皮膚化粧品」が勃興

2018.10.29

特集

編集部

次代の化粧品フロンティアとして注目されているのが人工皮膚化粧品である。人工皮膚化粧品は、皮膚形成技術で、顔のシワやたるみを隠すもの。
株式会社資生堂(東京都中央区)は、米オリボ・ラボラトリ―ズ(マサチューセッツ州)が持つ「セカンド・スキン」と呼ばれる人工皮膚形成技術の特許と関連事業を買収し、人工皮膚化粧品分野に参入した。買収価格は不明。

セカンド・スキンは、肌に特殊な高分子化合物を配合したクリームと専用の乳液を重ねて塗ると、人工皮膚が瞬時に形成されて凹凸を補正しシワやたるみを隠せる。皮膚呼吸も妨げず肌への負荷も低い。
一般的に市販されているシワ改善化粧品は数週間の継続使用が必要だが、セカンド・スキンの技術を使えば即効性のある商品を開発できる。
同社は今後、成分の改良を進めて、美容液などのスキンケアや日焼け止めなどを商品化する。

再生医療技術をドメインとする国立研究開発法人理化学研究所(埼玉県和光市)の認定ベンチャーの株式会社オーガンテクノロジーズ(東京都港区)は、皮膚器官系再生の研究成果を基に化粧品や医薬部外品の研究開発を支援する人工皮膚モデル「アドバンスドスキン」を開発した。
表皮4層、真皮2層のヒト皮膚組織構造を再現し、化粧品などの安全性や有効性などの機能解析に用いることで的確に製品の特徴を打ち出すことができる。

化粧品や医薬部外品などの開発では、生体皮膚の生理的応答性を再現できる人工皮膚モデルの重要性が高まっている。
従来は主に、表皮4層モデルが安全性評価に用いられてきたが、表皮と真皮を含めた機能性評価はほとんど行われず、まれに表皮4層・真皮1層のモデルが用いられることはあった。
「アドバンスドスキン」は、ヒトの皮膚に近い構造を再現しているため、従来の皮膚モデルでは難しかった機能性成分や薬用化粧品の皮膚への効果検証を表皮や真皮への効果として評価できるようになった。肌質機能性の評価で「肌に優しい」などのイメージ、キメ、ハリや弾力、保湿などの効果を科学的に立証した製品開発が期待できる。

人工皮膚モデルを販売するだけでなく、顧客企業の研究員訓練用として研究技術サポートをパッケージにして提供するビジネスモデルにも力をいれる。
現在、毛包や皮脂腺などを備えた新しい皮膚モデルも開発中。また、同社は、この技術をもとに新たな化粧品の開発を進めており、2020年までに商品化を目指す方針。

今のところ人工皮膚化粧品は、しわやたるみの箇所に人工皮膚(シート=写真)を貼るなどして隠すもの。だが、皮膚細胞を培養してしわやたるみを除去し皮膚を再生する再生医療品が登場することも考えられる。

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