〇解説記事④人工皮膚化粧品の研究開発に力 ~花王、ファインファイバー基盤技術で人工皮膚開発~(Ⅰ)

2019.09.20

特集

編集部

美容の新しい潮流として人工皮膚化粧品の研究開発が加速している。人工皮膚化粧品は、人間の皮膚組織と洗顔料ビオレ事業と子会社カネボウ化粧品株式会社(東京都中央区)で化粧品事業を展開する花王株式会社(東京都中央区)は、人工皮膚開発の基盤技術として「積層型極薄膜・人工被膜」を肌表面につくる「ファインファイバー」技術を開発した。

同社が公表したファインファイバー技術(写真)は、小型の専用装置にセットした化粧品用のポリマー溶液を装置のノズルを通して直径がサブミクロンの極細繊維を肌に直接、噴射することで、肌表面に「軽く」「やわらかい」、自然な積層型極薄を自在に形成できるもの。
特徴は、極細繊維が有する「毛管力」(物体内の狭い隙間が液体を吸い込む力)と合わせて一緒に使用する化粧品製剤の保持力や均一化に優れていること。同時に、極薄膜は、折り重なった繊維と繊維の間に化粧品製剤をしっかりと保持する。また、液状の製剤を膜全体に速やかに均一に広げる一方、繊維の隙間から適宜水蒸気を通すため、肌を完全に閉塞することなく適度な透湿性を保つ。 同じ積層構造をした超薄膜の人工皮膚を肌の表面に形成。合わせて人工皮膚に製剤を組み合わせてシワやたるみを隠す化粧品を実用化することを狙う。すでに国内の化粧品メーカー花王と資生堂は、人工皮膚の基盤技術開発にメドをつけるとともに、基本技術を応用して人工皮膚化粧品開発に取り組むなど拍車をかけている状況にある。

同社は、ファインファイバー技術開発にあたって不織布産業分野でエレクトロスピニング法(ES法)と呼ばれる極細紡糸技術を応用して開発を実現した。
ES法は、プラスに帯電したポリマー溶液をマイナスに帯電した対象物表面に向けて噴射する技術。あたかも蚕が繭を紡ぐときのように、ポリマー溶液がノズルを通して糸状に引き伸ばされながら勢いよく噴き出し、対象物の表面で幾層にも重なりあって膜を形成する。
これによりでき上がった膜は、端面(ふち)に向かって薄くなるため、肌に自然になじみ、肌との境目が見えない。また、膜と肌の段差が極めて少ないことから、はがれにくさも実現する。

同社がファインファイバー技術を開発した背景には、これまで、紙おむつ、生理用品などのサニタリー製品、住居用ワイパーに代表されるホームケア製品などの分野において、さまざまな特性の不織布を開発・応用してきた。さらに、次世代の不織布開発につなげるべく、繊維の「細さ」が生み出す毛管力、やわらかさ、密着力といった機能に着目して自社製ES装置開発に取り組んだ。
こうしたES研究の過程でつくりだした繊維膜の性状が皮膚(角層)に近いことに気づき、化粧品への応用を着想。機械、電気、素材、安全性、構造解析など社内の専門部署の技術を結集してファインファイバー開発に繋げた。

 

 

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