連載・新興市場上場の美容業界各社の経営・事業動向に迫る最終回:通販ジモス、市場から撤退、ナックがジモス事業展開(下)
2014.11.13
編集部
マザーズやナスダックなど新興市場に上場しても業績悪化や企業買収などで株式市場から姿を消す美容関連企業も散見される。2013年6月にダスキンや水の宅配事業などを行う株式会社ナック(東証1部:東京都新宿区)の傘下(子会社)に入った株式会社JIMOS(ジモス)もその一例として挙げることができる。
ナックは、ジモスの株式を保有していた株式会社サイバードホールディング(HD)の株を投資ファンド「サンブリッジ・テクノロジーファンド」を通じて株式を取得し、ジモスを傘下に収めたもの。現在、ナックは、事業の1部門としてジモス事業を行っている。
ナックの子会社となったジモスの企業変遷は、1998年9月に福岡県内で化粧品や健康食品などの通販事業を立ち上げた。創業から5年半というスピードでジャスダック市場に上場(2004年3月)し、その急成長ぶりに誰しもが驚いた。また、ジモス上場が確実と見た多くのベンチャーキャピタル(VC・投資会社)は、堰を切ったように投資(表に主要投資VC名を示す)を行い、ジモス上場による株式売却益(キャピタルゲイン)を手にした。
上場当時の2004年6月期売上高は、前期比35%増の97億1,300万円を計上。2005年6月期は、化粧品や健康食品などの拡販や新商品の投入などで前期比25%増の121億4,900万円を見込むなど破竹の勢いにあった。
急成長の要因は、独自のビジネスモデル「単品訴求型通販」を錦の御旗にして特定の商品絞り込んでプロモーション活動や顧客データベースの構築などに努めたことが大きい。
ところがジャスダック上場後の2005年3月にモバイルコンテンツ事業を行う株式会社サイバード(東京都渋谷区)と資本提携、経営統合(2006年10月、サイバードを持株会社)してから経営にゆがみを生じた。サイバードの2007年3月期決算が78億3,000万円の大幅赤字となり同年6月にジモス創業者が全ての役職から離れた。2008年3月には、サイバードが企業買収の手法のひとつMBO(マネジメントバイアウト)を実施し、上場廃止に追い込まれた。2013年10月にサイバード保有のジモス株をナックに株式譲渡する経緯を辿った。
ジモスが市場から撤退した最大の要因は、サイバードと経営統合したものの「単品訴求型通販」のビジネスモデルに急ブレーキがかかり収益悪化に追い込まれたことが主因。また、ナックがジモス株を手に入れた理由は、ダスキンで培った一般家庭を中心とした顧客基盤の強化と23万人と見られるジモスの会員を新たな成長ドライバーに位置付けて収益向上を図るのが狙い。
ともあれ、ベンチャーが上場するまでには、事業資金をVCなどから投資を受けて事業を成長軌道に乗せる十字架を背負う。同時に、上場したにも関わらず収益悪化で撤退を余儀なくされるなど、ベンチャービジネスは陽と陰が織り成す。上場したからといって手放しでは喜べない。ジモスのケースは、まさにそれを物語る。