【連載】台頭する創薬・再生医療ベンチャー【10】ナノエッグ、治療薬開発のパイプライン揃う

2014.01.16

特集

編集部

株式会社ナノエッグ(川崎市)は、化合物(薬効成分)のレチノイン酸(ビタミンA活性体)などをナノスケール(直径15~20ナノ㍍)サイズで、薄膜状の炭酸カルシウムでコーティングした無機質のナノカプセル化技術(ナノエッグ技術と称す)と高分子量の薬物や水溶性薬物の高効率な経皮吸収を可能とするジェル状外用基剤「ナノキューブ」(登録商標)を使った新規経皮伝達システム(ドラッグ・デリバリーシステム)を得意とする聖マリアンナ医科大発ベンチャー。ナノカプセル化技術をベースに機能性化粧品事業をはじめ、育毛剤開発、医薬品事業にも着手する注目企業だ。

米食品医薬品局(FDA)が異常な細胞を正常細胞に分化させる能力がある物質で、多くの研究者が急性前骨髄性白血病「抗がん剤」の飲み薬として臨床現場で使われていた薬効成分のレチノイン酸について「シミ・シワ」など治療外用剤として認可していることに着目。ナノエッグの薬理効果の検証を行い、皮膚の表皮層再生効果が顕著で「非常に有効である」ことを確認。この成果をベースに科学技術振興機構(旧科学技術振興事業団)が公募していた独創的シーズ展開補助事業に応募して採択されたことを踏まえ、事業化(2006年4月法人設立)に踏み切った。

ナノカプセル化技術は、レチノイン酸などの薬効成分を100%閉じ込めて細胞に効率よく浸透(ドラッグ・デリバリーシステム)させる特徴を持つ。また、ナノキューブは、肌本来の自己治癒力を引き出す特徴があり、皮膚表皮細胞の基底細胞の増殖と分化を促進し、皮膚の再生作用を促す。

こうした得意技術を収益面に反映させるため、法人設立後の早い段階からナノカプセル化技術を製薬企業に、ナノキューブ技術をエステ大手TBCグループや化粧品会社などに供与し、共同研究開発費やマイルストーン(研究開発の進捗に応じて支払われる成功報酬)、ロイヤルティー収入などを獲得した。

現在、同社の事業は、ナノカプセル化(ナノエッグ)製剤やカプセル化によるシミ・ニキビ治療薬などの医薬品事業とナノカプセル技術や皮膚科学技術を駆使した機能性化粧品事業の2事業を主体に事業展開している。

key_visual_hourei_new収益の柱になっているは、ナノエッグ技術とナノキューブ技術を駆使して開発し、2007年から販売した自社ブランドのエイジングケア化粧品「マリアンナ」(写真)と2008年3月に江崎グリコとの共同研究で誕生した「ブライトニングシリーズ」(化粧水、乳液、クリーム)を主軸とした機能性化粧品事業。現在、通販と一部のコンビニなどで販売しており同社の総売上高の約7割が化粧品とへアカラーの販売で占める。

こうした主力製品に続いて新たに、育毛剤の開発に取り組んでいる。育毛剤の開発は、2008年3月に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から研究開発型ベンチャー技術開発助成事業に採択され、ナノカプセル化技術とナノキューブ技術を応用して新しい化合物を作り出し、毛根経由での薬剤吸収率の向上と毛根の賦活化技術などに取り組んでいる。

同社は、当初、2011年度中に実用化してドラッグストアなどで販売する計画を立てた。しかし、同社では「現段階で技術開発のメドが付いていない」として実用化が遅れていることを認め、まだ時間がかかる状況にある。一方、医薬品事業は、レチノイン酸をナノカプセル化し、シミやしわ、にきびの外用剤をはじめ変形性関節症や糖尿病(経口剤・注射剤含む)など有望なパイプラインが揃っており今後、医薬品事業でどのような治療薬を開発し、収益に繋げるのか、注目される。

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株式会社ナノエッグ

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