【連載】化粧品各社のイノベーション研究【12】ホソカワミクロン① ~PLGAナノ粒子とDDS技術開発、化粧品等に応用~

2016.02.15

特集

編集部

化粧品のイノベーションを象徴する動きとして、粒体装置のトップメーカーのホソカワミクロン株式会社(大阪府枚方市)が化粧品分野に本格参入して約14年が経過した。
同社は、粉体処理装置の世界的リーディングカンパニーとして存在し続け、機械販売のビジネスモデルにおいては、世界ナンバーワンを自負する。しかし、機械販売のビジネスモデルでは、容易に外見をコピーできるため、性能に差はあるものの非常に安価な後発製品が作られてしまう傾向にあった。

こういったビジネスモデルを回避し、他社に真似されず付加価値の高い商品を提供する新しいビジネスモデルを構築するために取り組んだのが、化粧品開発を目的とした生態適合性高分子ナノコンポジット粒子応用の薬物伝達システム(DDS)の開発であった。
DDS技術は、2001年度から2004年度までの約4年間、NEDOの基盤技術研究促進事業に認定(開発委託)されて開発したもの。
ホソカワミクロン「PLGAナノ粒子」技術的特性として、生体適合性高分子PLGA(乳酸とグリコール酸共重合体)の粒子(PLGAナノ粒子=写真)の大きさが平均200ナノメートル(nm)に微細化し、微細化した粒子の中に有効成分を封入(ナノコンポジット化)して角質層内へ搬送することで、有効成分を皮膚の表皮から真皮まで効率よく浸透させる。
PLGAナノ粒子は、PLGAが乳酸とグリコール酸がエステル結合によって共重合した構造を成す。エステル結合部位は、水との共存下で容易に加水分解するため、分解を利用して内包した有用成分を除放化できる。同時に、水分や酵素などによって乳酸とグリコール酸に分解され、さらに水と炭酸ガスへ分解されて体外へ排出されるので、体内に残留しない安全な基材である。
また、PLGAナノ粒子の機能性として、PLGAの分子量や乳酸とグリコール酸の重合度を変えることで、PLGAナノ粒子からの有用成分の溶出や除放が制御できる。
特に、PLGAナノ粒子の最も大きな特徴として、ヒト皮膚への浸透性が高いことが挙げられる。ヒト摘出皮膚片に対する蛍光標識タマリンを使った皮膚浸透性試験では、角質層全域に浸透していることが県立広島大学の研究チームらで実証されている。

PLGAナノ粒子について同社は、「製法特許などに基づいて技術開発したナノテク粒子である。PLGA は生体内に存在する「乳酸」と「グリコール酸」がエステル結合によってランダム共重合したもの。疎水性で非晶質のポリ乳酸(PLA)と親水性で結晶性が高く有機溶媒に不溶なポリグリコール酸(PGA)の性質を相補した物性を持つ。両者の組成比や分子量の違いでガラス転移点や生体内分解速度が異なるため、目的とする製剤設計に応じた基材を選択することにより薬物の放出速度を任意に設定できる。また,生体内では、最終的に水と二酸化炭素となって体外に排泄されるので安全である。化粧品分野では、当社以外に量産販売が困難な材料(基材)」と、他社との差別化を強調する。

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