【連載】化粧品各社のイノベーション研究【24】大塚製薬① ~大津スキンケア研究所で健粧品の研究開発に着手~

2016.05.17

特集

編集部

大津スキンケア研究所大塚ホールディングス(HD)傘下の大塚製薬株式会社(東京都千代田区)がスキンケア商品の開発に取り組んだのは、1990年に大津スキンケア研究所(滋賀県大津市=写真)を設立し、体重の約16%を占める身体器官の皮膚に関して、肌の健康をテーマとした化粧品「健粧品」開発をスタートさせたことに始まる。

同社は、大津スキンケア研究所で研究開発される化粧品を“健粧品”(コスメディクス)と呼ぶ。コスメディクスは、Cosmetics(化粧品)とMedicine(医薬品)を掛け合わせた造語。
人間の身体の内側だけではなく、その身体を覆っている「皮膚」も健康にしたいという肌の健康を考える「健粧品=コスメディクス」という概念のもと、2年近くかけて植物の発芽や成長に寄与するエネルギー代謝関連成分の探索を始めた。

その中から細胞でのシグナル伝達物質として、アデニンとリポースの化合物「アデノシン」にリン酸が1つ結合した「アデノシン1リン酸」(AMP)に着目した。
AMPは、若竹の節、種子、母乳などに含まれるエネルギー代謝の中核物質として知られていた。しかし、細胞のエネルギーであるATP(アデノシン3リン酸)の量は加齢とともに減少するため、肌細胞のエネルギー代謝を活発にするAMPの優れた働きをどのように肌に生かして有効な成分とするかが課題となった。
そこで、皮膚に天然酵母由来の「エナジーシグナルAMP」を塗布すると、細胞内でAMPと同じ作用で働き、ATPの産生(増産)を高めることを突き止めた。
ATPの産生を高める時にシグナルとして働くのがAMP。細胞内にAMPが十分に存在すると、ATP産生の燃料となる糖(グルコース)の細胞への取りこみが促進されて代謝が活性化、ターンオーバーを促進する作用があることを解明した。

シミやソバカスは、紫外線から肌を守るためにメラノサイトが出したメラニンが蓄積したもの。若い肌では、蓄積したメラニンは、ターンオーバーによって体外排出されるのでシミになりにくいが、年を取ると細胞の代謝活動が衰え、ターンオーバーの期間が長くなってメラニンが肌に残り、シミが目立つようになる。
ターンオーバーを促進するには、細胞のエネルギーであるATPの産生を高めることが重要。
ATPを増産するとき、“シグナル”として働くのがAMP。細胞内にAMPが十分にあるとATP産生の燃料となる糖(グルコース)の細胞への取りこみが促進されて代謝が活性化、ターンオーバーが促される。
ところが、ATPの量は加齢と共に減り、17歳を1とすると60代では6割以下に減ってしまうことが指摘されている。
そこで同社は、皮膚に天然酵母由来の「エナジーシグナルAMP」を塗布したところ、細胞内でAMPと同じように働き、ATPの産生を高めることを突き止めた。

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