ポーラ化成工業株式会社ポーラ化成、シワ・たるみの改善、肌荒れの原因等解明②

2017.09.5

特集

編集部

化粧品研究開発においてポーラ化成工業は、エイジングケア・ホワイトニング領域における素材開発に特に力を入れ、シワの改善メカニズムや素材探索などの化粧品研究開発について国際化粧品技術者会連盟などの各種学会で発表活動を活発化させている。

同社は、2017年1月から8月までの8ヵ月間で技術リリースとして公表した件数は17件に上る。その中で、皮下組織に着目し、加齢により頬やフェイスラインに現れるタルミとの関係についての研究に力をいれその成果を明らかにしている。

人間の肌は「表皮」「真皮」「皮下組織」の 3 層に分かれており、最も奥にある皮下組織には、RC(retinacula cutis) と呼ばれる線維構造が存在し、RC は皮下組織を柱のように支えるなど肌の形態維持に重要な役割を果たしている。同社は、これまで加齢に伴いRCが疎になってしまうことがタルミを引き起こす原因のひとつであることをこれまでの研究で明らかにしてきた。

ここへきて同社は、加齢とともに RC が減少する原因を詳細に調べたところ
① RC を構成する主成分の「Ⅰ型コラーゲン」と「ミメカン」が加齢によって著しく減少していること(図参照)
② RC には「腱細胞」が存在し、これらの RC 構成成分の産生を加齢によって産生量が顕著に減少することなどを世界で初めて発見した。
また、タルミの改善につながる素材を見出すため、培養した腱細胞を用いてⅠ型コラーゲンとミメカンの産生を促進するエキスを探索した 結果、ノイバラ果実エキスに RC 成分の産生を 高める効果を見出した。

以上のことから同社は「顔のタルミが目立つ人では皮下組織の中に存在する線維構造「RC」を構成する成分が減少し、加齢によって腱細胞のRC成分産生量が低下した結果、皮下組織中のRC が減少してタルミが引き起こされる可能性が強い」と指摘している。

さらに研究開発の中で「睡眠不足による肌荒れの原因解明」も肌技術の研究として興味が注がれる。

同社は、睡眠不足による肌荒れの原因解明として、20~40 代の男女 17 名を対象に8 時間以上の睡眠をとった日の朝と3 時間以下しか睡眠をとっていない日の朝の角層のコルネオデスモゾームの量を比較した。

その結果、睡眠不足の日は、角層細胞間同士を接着させる細胞間接着因子「コルネオデスモゾーム」の分解が進まずバスケットウィーブ角層構造が作られないことがわかった。このことから、角層のバスケットウィーブ構造の形成が不十分であることが、睡眠不足による肌あれの原因と判断した。

十分な睡眠が取れた際の角層は、角層細胞間同士を接着させる細胞間接着因子「コルネオデスモゾーム」が分解され、バスケットウィーブ角層と呼ばれる角層構造となる。バスケットウィーブ角層とは、コルネオデスモゾームが分解されることで上下の角層細胞同士が離れ、その生まれた空間に細胞間脂質が充満した角層のことを指す。その様子がまるでカゴの目のように見えることから、バスケットウィーブと名付けられている。また、同社は、バスケットウィーブ構造の形成を促進するスキンケア製剤を開発した。

睡眠不足による肌あれを再現した三次元培養皮膚モデルを用いてバスケットウィーブ構造の形成を助ける製剤の条件を調べた結果
①水の中に油滴が分散している水中油 剤型であること
②水相にラメラと呼ばれる規則的な構造をもつこと
③粉体を適量含むことなど3 条件が鍵であることを見出した。
また、これらの条件がそろった製剤を塗布するとバスケットウィーブ構造の形成が進み角層細胞間は細胞間脂質で満たされることを確認している。

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