【連載】大手化粧品会社の研究(51)聖マリアンナ医科大発ベンチャー、ナノエッグの会社研究 ~豊麗シリーズが再建を後押し、アトピー性皮膚炎開発に力~(下)

2018.09.27

特集

編集部

ナノエッグは、政府のベンチャー表彰制度を複数受賞するなど業界でもその存在が知れ渡っている。
法人設立後に受賞した主な表彰制度は「ジャパンベンチャーアワード2012」で中小企業長官賞を受賞(2012年2月)したのを皮切りに、2014年5月に「第25回中小企業優秀新技術・新製品賞」を受賞。2017年2月には「第3回日本ベンチャー大賞」の女性起業家賞を受賞するなど栄誉に浴した。
いずれの表彰制度も経済学部や中小企業庁・中小基盤整備機構等が主催者となって、社会的インパクトのある新事業を創出した起業家やベンチャー企業を表彰して称えるもの。
同社が表彰を受けた理由として、化粧品に関わる独創的な技術や新製品等の開発を積極的に行い、積極果敢に事業に挑戦していることが多くのベンチャーの模範になると評価されたことによる。

しかし、ベンチャーとして技術の優秀性が評価されて表彰される一方で、経営は必ずしも順風満帆とは言えない状況にあった。
法人設立5年後の2011年4月に数億円近い債務超過を抱えて希望退職者を募り、20人いた社員の人員削減を断行した。
多くのベンチャーの欠点は、技術の優秀性におぼれ肝心の販売が盲目になっている点が指摘される。高度な商品を開発すれば、おのずと商品は売れていくとの白眼視的な論理に基づく。

同社が倒産寸前に追い込まれたさなか、幸運なことに2010年12月に市場に投入した口もと年齢美容液「豊麗」シリーズが消費者の支持を受けて需要が急増。同商品が再建を後押しした格好となった。
この受注好調を要因に同社は、2015年12月に株式会社ケイエスピー(神奈川県川崎市)とグローバル・ブレイン株式会社(東京都渋谷区)、SMBCベンチャーキャピタル株式会社(東京都中央区)の3社を引受先とする第三者割当増資を実施し、総額1億3千万円の資金を調達した。調達した資金は、マーケティングの強化と設備投資に充当した。
第三者割当増資後の業績は堅調に推移し、売り上げは、順調に推移している。現在の売上は「豊麗」シリーズを中心にヘアケアの「キラリ」シリーズや薬用育毛剤「ふわり」、美白用スキンケア「シロエホワイト」シリーズ等の販売が堅調。 売り上げは、年率平均15%程度で伸びている状況。

今後の事業については、医薬品にかける期待が大きい。特に、アトピー性皮膚炎の研究を加速しており、できるだけ早く商品化にめどをつけて市場に投入する方針。今のところ、具体的な開発・販売戦略が見えないため、経営への貢献度は、未知数だ。

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