【連載】化粧特許と知的財産権⑮ナノエッグ、特許保護など三位一体活動、IP0目論む(下)
2019.08.2
編集部
ナノエッグは、新たな化粧品開発にあたって国の新製品開発助成制度を活用する一方、国の褒賞制度・顕彰制度等に積極的に応募して認定されるなど技術の優秀性や企業の認知度向上に繋げた。その甲斐あって投資の誘導や株式公開を目論むまでに事業を成長させている。
同社がこれまで研究開発企業として国や公的機関等から褒賞制度・顕彰制度に事づいて表彰されたのは、日本バイオベンチャー大賞・バイオインダストリー協会会長賞(2009年10月)やジャパンベンチャーアワード・中小企業長官賞(2012年2月)などがある。また、国から採択を受けた主な補助事業は、2009年3月にNEDOから産業技術実用化開発助成事業に採択されたのをはじめ、2016年6月にNEDOの研究助成事業として独自開発成分「GK2egg」配合の薬用育毛剤」を開発した。2017年2月には、DDSを用いた化粧品の開発・販売で第3回日本ベンチャー大賞・女性企業家賞を受賞した。
最近では、2018年6月に国が有望ベンチャー企業や中小企業等に投資や出資、海外展開、共同研究開発等の集中支援を行う「Jスタートアッププログラム」(J-Startup)の支援対象企業に認定されたことが注目される。
Jスタートアッププログラムは、政府の「未来投資戦略2018」において時価総額10億ドル(邦貨換算1120憶円)以上の資産価値を持ちながら未上場の企業「ユニコーン企業」もしくはユニコーン企業に続く有力なスタートアップ企業「NEXTユニコーン企業」や上場ベンチャー企業の創出を狙いに2023年までに20社創出することを目標に資金、販売、新技術・新製品開発等を集中して支援するもの。
Jスタートアップの事務局は「経済産業省」と「日本貿易振興機構」(JETRO)及び「新エネルギー・産業技術総合開発機構」(NEDO)が務めている。経済産業省は、これまでJスタートアップを立ち上げた2018年6月から2019年3月までに認定した累計認定企業数は、92社に上る。
Jスタートアップ企業92社の選定は、事務局が選んだベンチャーキャピタリストやアクセラレーター、大企業のイノベーション担当者などから成る推薦委員が担当した。「ミッション」「独創性」「成長性」などの評価軸で、各委員が一押しの企業を推薦。その評価を基に、外部審査委員による審査を経て92社を選んだ。
Jスタートアップに認定された同社は、すでに官(政府)と民(サポーター企業)の集中支援のもとJ-Startupロゴの使用、政府の海外ミッションへの参加、国内外の大規模イベントの出展、各種補助金などの支援政策における優遇や手続きの簡素化、大企業や省庁とのビジネスマッチングなどの支援を受けている。
バイオベンチャーである同社は、知財活動の重要性は強く認識する一方、目先の収益に走りがちな傾向を課題と認識。収益を生むビジネスモデル構築、ビジネスモデルに基づく研究開発、研究開発成果の特許による保護という三位一体活動の必要性を強く意識している。とりわけ機密化すべきコア技術と戦略的に活用する技術の切り分けが明確になり、研究開発におけるテーマ設定の考え方が変化していることがみられる。とりわけJスタートアップに認定されたのを契機に今後、大幅な収益実現による株式公開に期待がかかる。