【連載】化粧品・美容各社の業績と企業買収⑩化粧品・美容各社の業績と企業買収 ~コーセー、米タルト社買収、欧米市場等攻略へ~
2019.11.5
編集部
株式会社コーセー(東京都中央区)の主な企業買収として2002年4月に国内でドクターコスメを展開していた現株式会社ドクターフィルコスメティク(東京都中央区)と2014年4月に米タルト社の株式93.5%を約135億円で取得して子会社化した2件ときわめて少ない。特に、タルト買収は、コーセーにとって初の海外M&Aである。
タルト社は1999年設立で、果物などの天然由来成分を配合した化粧品を特徴とする。買収した当時、タルトは、小売店チャネルのほか、インターネット販売やテレビ通販に強みがあり、米国では20~30代の女性を中心に人気を集めていた。
タルト買収は、米国市場の攻略が狙い。同社は、タルトを買収した翌年の2015年に北米の統括会社「コーセーアメリカ」(米ニューヨーク)を設立し、米国市場攻略の基盤を整えた。
2019年10月現在、タルトを買収して約5年半が経過したが、北米市場での業績への貢献度はどうか。
同社の直近(2019年3月期・連結)の業績は、売上高が前期比9.8%増の3329億9500万円となった。この中で化粧品事業の売上高は、国内外で「コスメデコルテ」が売り上げを牽引。また、コスメタリー事業は、日焼け止めやヘアケア、ネイル等の売り上げが伸長して売上高が746億3200万円となった。
一方、市場別業績(売上高)は、日本市場が2402億円、アジア市場が前期比46.1%増の514億7400万円、北米市場が前期比1.6%増の375億4600万円、その他地域が前期比13%増の37億7200万円となった。
アジア市場が大幅に伸長したのは、免税店やEコマースなど新販路の開拓を強化。合わせてインバウンドや市場との連携を図った結果、ほぼすべての区と地域でプラス成長となった。特にEコマースの成長が著しい歓呼P区、中国が好調に推移したことが大きい。
北米市場については、メイク市場が競争激化の中で、米タルト社による専門店チャネルやEコマースの販売が好調に推移。また、その他地域についても米タルト社による欧州市場や豪州市場でのEコマース等による販売が好調に推移するなど堅調な動きを見せている。
同社は、2018年4月末に2026年度までの経営ビジョンの中で海外売上比率を2018年3月期比10ポイント高い35%にする目標を掲げている。とりわけ北米市場の収益拡大は、タルト社の肩にかかっている。
その意味で、今後、北米や欧州市場でタルト社の収益がどの程度伸長し、海外の売上拡大に繋げられるか、今後のタルト社の動向が注目される。