【連載】この中小化粧品会社に注目(52)ル・シェール(上)~免疫活性成分ソマシーの研究開発に力~
2021.04.15
編集部
株式会社ル・シェール(東京都港区、社長 青山早苗氏)は、1993年に機能性の高い化粧品、健康食品等を開発、製造する目的で設立した。現在の事業規模は、資本金3000万円、社員約21名の小規模事業者。
事業面での特徴は、小麦から発見された免疫活性化成分「ソマシー」の研究開発に力を入れている。
ソマシーは、小麦に共生しているパントエア菌(グラム陰性細菌)由来の物質「LPS」(リポポリサッカライド=糖脂質)で、1991年に東京大学薬学部の研究グループが小麦から発見した免疫活性化成分。
LPSは、グラム陰性細菌の成分で、グラム陰性細菌の細胞壁の外側にぎっしりと埋め込まれた形で存在している。糖と脂質が結合した構造をしていることから「糖脂質」あるいは「リポ多糖」とも呼ばれている。
LPSは、マクロファージ(白血球の1種)を元気にすることが大きな特徴。LPSがマクロファージを活性化する仕組みは、マクロファージの細胞表面に様々な物質をキャッチするためのレセプター(受容体)が多数、存在する。
その中のTLR4というレセプターがLPSをキャッチする。TLR4にLPSが結合すると、細胞内の核にまでシグナルが伝達されて核の中の遺伝子を揺り動かして細胞が活性化する。
マクロファージは、直径15~20μmの比較的大きな細胞で、全身の組織に広く分布しており、自然免疫(生まれつき持っている防御機構)において重要な役割を担っている。この細胞は、体内に侵入した細菌などの異物を食べる能力に優れており、食べた細菌を消化・殺菌することで、細菌感染を防ぐ。また、肌への働きとして免疫細胞「ランゲルハンス細胞」を元気にすることも特徴。
ランゲルハンス細胞は、樹状突起を角質層まで伸ばしているため、他の成分では浸透しない深部まで働きかけることが可能。このため、肌のハリや弾力、潤いなどの基であるコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸などと密接な関りを持つなど肌本来の美しくなる力を引き出すことが知られている。
2003年に香川大学発のベンチャー企業「自然免疫応用技研」がLPSを機能性原料として実用化し「ソマシー」(商標登録)の商品名で市場投入した。