「我が社の生薬配合化粧品ビジネス」【10】佐藤製薬、高濃度抽出・高浸透技術を駆使して育毛剤開発、特許を申請(下)
2015.06.19
編集部
佐藤製薬の女性用育毛剤「髪美力」(写真)は、アマゾンハーブエキス、完熟メカブエキスに代表される独自成分の開発・配合と合わせて植物・生薬などから原料として必要な成分だけを高濃度に抽出する高濃度抽出技術や薬物搬送システム(ドラッグデリバリーシステム=DDS)による高浸透技術を駆使するなどして開発した。
高濃度抽出法は、植物などから抽出したエキスを化学的に分析し、有用な成分のみを効率よく引き出せるような条件を探索することで、有効成分を高濃度で抽出する処方技術。スキンケア化粧品にも応用している。
DDSは、親水性と疎水性の2種のブロックが絡み合った50から150ナノ㍍の集合体(ミセル)に保湿成分を包み込み、真皮と表皮の間にあって肌の生まれ変わりをコントロールする薄い膜「基底膜」に徐々に放出して浸透させることで、保湿力を持続させる。
同社は、2012年9月に毛乳頭細胞からの血管内皮細胞増殖因子を産生促進する作用があるペルーバルサムの成分「安息香酸ベンジル」と「オイゲノ―ル」などの化合物を含有することを特徴とした発毛促進剤として特許を申請した。
同社が特許申請に踏み切った技術的な背景には「毛髪の毛周期の進行に毛乳頭細胞が重要な役割を担っており、毛乳頭細胞から産生される血管内皮増殖因子(VEGF)やケラチノサイト増殖因子(KGF)などが成長期の維持や退行期、休止期への移行に深く関与している」と指摘。
例えば、毛乳頭細胞から産生される血管内皮増殖因子については「発毛を促進することや医薬品としての育毛剤に用いられているミノキシジルの作用に関与することが知られている。また、ステロ―ル糖エステルを有効成分とする育毛剤や茶類米酢液を有効成分とする発毛育成組成物などは、発毛作用のメカニズムや効果が満足すべきものでなかった。特に、発毛促進剤の安息香酸ベンジルは、香料、溶解補助剤として使用されていることは知られていたが発毛を促進する有効成分としての作用は知られていなかった。
こうした毛周期のメカニズムに基づいた効果の高い発毛促進剤の開発を目的に、安息香酸ベンジルとオイゲノ―ルが毛乳頭細胞からの血管内皮増殖因子産生を促進して発毛促進を発揮することを見出し、特許申請したもの。
同社では、伝統的薬用植物の生理作用を見つめ直して有用性についての科学的実証について引き続き力を入れて取り組み、知的所有権のさらなる確立を図る考え。