化粧品各社、尖閣問題で対中戦略見直しへ

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2013.03.26

編集部

人口13億人を擁しGDP(国内総生産)が世界第2位(2011年47兆2千億元・450兆円)に達した中国。好調な経済成長を映して化粧品市場も1590億元(2012年・1兆6千億円)市場を形成するなど日本の化粧品市場(1兆4千億円)を超えた。現在、消費地は、これまでの都市部から地方の省都に移り激しい争奪戦が展開されている。しかし、成長する中国市場になだれ込んだ日本の化粧品各社は、尖閣諸島の領土問題に伴う反日運動や不買運動で中国以外に新たな拠点を設ける「中国プラスワン」を志向するなど新たな対応に迫られている。

中国国家統計局によると中国のGDP(国内総生産)は、2011年で450兆円(47兆2千億元)に達した。今後、経済成長が年率平均8%台で伸びた場合、2020年には、1千兆円に乗せると予想。また、世帯可処分所得は、年間1万5千ドルを超える富裕層が2012年で2億5千万人に達し、2015年には5億人に達すると見ている。こうした中国の高度経済成長を映して化粧品市場は、2011年の1122億元(1兆3千9百億円)から2012年に約1590億元(約1兆6千億円)に達し「日本の化粧品市場を超えた」(中国香料香糖化化粧品工業協会調べ。1元15円換算)。富裕層の増加を背景に大都市部や沿岸部の百貨店、化粧品専門店を中心にロレアル、シャネル、ディオール、ランコムなど欧米ブランドが販売を伸ばし、すでにメイクアップ化粧品、スキンケア化粧品分野で約6割のシェアを占めた。特に、欧米ブランドは、消費者のブランド志向の高まりで、価格帯が600元以上のプレステージや500元を超えるハイエンドクラスで販売が好調。これらの欧米企業に対し資生堂、コーセー、富士フイルム、花王、カネボウ、メナードなど中国市場に参入している主な日系企業は、ブランドの浸透を狙ってプレステージ、ハイエンドクラスまで手を広げてきた。しかし、最近では、市場全体の58%を占め(金額ベース890億元)、市場を牽引している価格帯300元のミドルマス層を中心に販売を強化している。化粧品の消費地域もこれまでの大都市や沿岸部から西安、重慶など内陸部の省都へ移ってきた。花王は、2011年11月に内陸部に販路を持つ中国化粧品大手「上海家集団有限公司」と業務提携したが内陸部強化を加速する狙い。欧米企業に大都市でシェアを奪われて劣勢に立たされている状況を打破しようと現在、地方都市での薬局、薬剤ルート強化に取り組む。また、欧米系化粧品各社も内陸部の地方都市でマス層の中間層をターゲットにした戦略に打って出ており中国国内の化粧品メーカーを含めた内陸部での市場争奪戦が一段と激しさを増す状況にある。

中国化粧品市場で見逃せないのはネット販売。香港の大手ポ―タルサイト運営会社「モービルテクパシフィック」は、エリアを絞りこんで認知度を上げ若年層の取り込みに繋げている。ロレアルもここへきてネット販売を強化、TV広告や街中広告と合わせてブランドの訴求力向上に取り組んでいる。これまで価格帯やエリアによって棲み分けされてきた中国化粧品市場は現在、入り乱れての競争状態にある。そうした中で、日本の化粧品各社にとって懸念材料となっているのが尖閣諸島での領土問題。化粧品各社は「魅力ある中国市場で継続した事業を展開したい。しかし、再度、反日デモが起こり生産縮小、販売不振に追い込まれるか、分からない」と言うのが共通した認識。とりあえず中国に生産・販売の拠点を置きながら中国に加えてもう一つの拠点をアジアに設ける「チャイナプラスワン」の志向が今後、さらに加速して行くのは必至だ。対中国市場の戦略見直しは避けられない状況にある。

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