【連載】化粧品各社のイノベーション研究【14】ミルボン② ~ケラチンたんぱく質の製剤化技術開発、毛髪の吸着性向上も実現~
2016.03.3
編集部
ミルボンは、毛髪の基盤技術、探索技術、応用開発を主たる研究領域としている中央研究所(大阪市)において、これまで加齢による毛髪特有のダメージ要因を解明する一方、髪のツヤに効果的なワックス成分の粒子サイズ域の発見や21歳から65歳の日本人女性の頭皮を調査した結果、加齢にともない頭皮の角質タンパク質を変性させて肌を黄色くくすませてしまう「カルボニル化」することを発見した。さらには、島根大学との共同研究により、女性ホルモンの一種「エストラジオール」が、血管新生を促進して毛髪の成長を促す遺伝子「「VEGF-A」の発現量を調節していることを発見。同時に「VEGF-A」の発現を促進させる成分として、「カンゾウ葉エキス」に高い発現促進効果があることを明らかにするなど毛髪の研究開発で成果を上げている。
こうした中、毛髪中に含まれるケラチンというたんぱく質「CMADK」を研究する中で、イオン性界面活性剤によって分散させる製剤化技術を開発。同時に、製剤化技術を用いて、化学処理などで損傷していない毛髪の根元部分(毛髪新生部)に対してCMADKの収着性を向上させることを実現するなど毛髪への製品化に活用する道を開いた。
同社は、毛髪のダメージ抑制や毛髪の弾力などの効果を持つ成分「CMADK」(毛髪中に含む2つの硫黄原子が共有結合した可溶性のケラチンたんぱく質)の工業化に成功し、多様な製品開発に応用している。
CMADKは、化学処理などで損傷した毛髪に吸着する半面、損傷していない毛髪の根元部分には吸着しにくい性質があるのが特徴。
このため、毛髪新生部に対するCMADKの吸着性を向上させる技術開発が大きな課題となっていた。そこで、酸性域で沈殿が生じたCMADKを分散させることを検討した結果、特定のイオン性界面活性剤を一定量以上添加することで、酸性域でCMADKの分散性を実現した製剤化に成功した。
さらに、特定のアニオン(陰イオン)性界面活性剤を用いたCMADK製剤により、CMADKの毛髪新生部に対する吸着性が向上することを実証した。
写真に蛍光ラベル化したCMADKを含む製剤で処理した毛髪新生部の断面の蛍光顕微鏡の写しを示す。写真のaは、従来の製剤、bは、カチオン(陽イオン)性界面活性剤を用いてCMADKを分散した製剤、cは、酸性域で、アニオン性界面活性剤を用いたCMADK分散製剤を表す。
吸着性の向上は、CMADKに蛍光性分子を結合させることで、CMADKが毛髪内のどの部分に存在するか、蛍光ラベルで観察した。この結果、酸性域でCMADKを分散した製剤により、CMADKの毛髪新生部に対する吸着性が高まることを確認した。
同社は、こうしたCMADKの毛髪ダメージ抑制と補習効果などの研究成果について今後のヘアケア商品開発に活用していく方針。