幹細胞コスメの最近のトレンド京セラ・理研、オーガンテクノの幹細胞研究 ~京セラ、細胞の受託製造事業へ参入目指す~(下)
2017.12.26
編集部
長年培ってきた精密部品の微細加工技術や人工関節などの医療事業を手掛けてきた京セラは、3社の共同研究の中で、器官の基となる毛包原基の量産化について電子部品で培った微細加工技術(デバイス大量生産技術)を生かして細胞の自動培養装置を開発し、2020年メドに細胞の受託製造事業への参入を目指す。
京セラが取り組む自動培養装置は、元気な髪の毛の自家細胞(毛乳頭細胞と上皮性幹細胞の毛包と呼ばれる毛根組織)の一部を後頭部から採取し、体外で培養して薄くなった部分に移植する自家細胞を使った移植療法。このデバイス大量生産技術を用いると頭皮の一部を採取するだけで、広い範囲の脱毛部分を再生することができる。
毛包再生医療のビジネスモデルは、患者自身の毛包から幹細胞を採取して加工し、患者自身に移植する自家移植が中心。
現在、患者の数が多い男性型脱毛症では、医療機関にて少数の毛包を採取し、受託製造会社がその毛包から幹細胞を分離して培養、増殖し、器官原基を再生する「器官原基法」により再生毛包原基を製造する。
この再生毛包原基をパッケージ化して医療機関へ搬送し、医療機関において患者に再生毛包原基を移植治療することをビジネスモデルとする。
京セラは、将来のヒトでの臨床応用を見据え、オーガンテクノロジーズと連携してこのビジネスモデルの受託製造会社へと発展することを目指して共同研究に参画した。
3社が脱毛症治療の共同開発に乗り出した背景には、男性型脱毛症をはじめ、先天性脱毛や熱傷性脱毛、女性の休止期脱毛などの患者が現在、日本全国で1800万人以上にのぼるなど患者の生活に大きな影響を与えていること。また、育毛剤や脱毛阻害薬、自家単毛包移植術など幅広い治療が行われ、大きなマーケットを形成している。しかし、これらの治療技術は、全ての症例に有効ではなく自家単毛包移植術による外科的処置によっても毛包の数を増加させることができていない。
このため、脱毛症等に対する毛包再生医療の開発を実現して患者のクオリティーオブライフに供することにした。
京セラは、3社の共同開発について「毛髪再生技術について今のところ具体的な成果は見られない」としているが引き続き開発に力を入れて取り組む構え。