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⑭化粧品・美容各社の業績と企業買収 ~ファンケルをキリンが1293億円で買収、画期的商品・サービスを目指す~(上)

株式会社ファンケル(神奈川県横浜市)は、キリンホールディングス株式会社(東京都中野区)と資本業務提携(2019年8月)を結んだ。キリンは、同年9月6日にファンケル創業者らが保有する株式33.0%(議決権ベース)を1293億円で取得し、ファンケルの筆頭株主になるとともに、ファンケルはキリンの持分法適用会社となった。
両社による資本業務提携は、協同して業務を行うことで、お互いの業務を効率化し、付加価値を高めることにある。

資本業務提携は、業務提携(アライアンス)に加えて資本提携による株式の異動があるため、業務提携を単独で行う場合よりも連携をより深めることができる。また、キリンが支配権を完全に取得し子会社化するような買収を行うとファンケルが上場会社であるため、上場廃止になる可能性があった。今回、これを避けるために資本業務提の手法をとったものとみられる。
資本業務提携も広い意味ではM&A(企業の合併や買収の総称)といえる。だが、今回の資本業務提携は合併や買収と違い、支配権の獲得を意図していない。キリンは、ファンケルとの資本業務提携に伴いファンケルの株式を取得し、持分法適用会社となった。

持分法適用会社とは、連結財務諸表上、持分法の適用対象となる関連会社をいう。原則として議決権所有比率が20%以上50%以下の非連結子会社・関連会社を指すが、投資の額を連結決算日ごとに修正することが求められる。

ところで、キリンとファンケルが資本業務提携を結んだことについてキリンホールディングスの磯崎功典社長は記者発表会で「ファンケルは健康寿命の延伸に取り組んでおり、その理念や目指している方向性は、クオリティ・オブ・ライフの向上、疾病の予防といった健康に関わる社会課題の解決を通じて企業としての成長を目指すキリンのCSV(共通価値の創造)の考え方と完全に一致する」と評価。また「両社は顧客や製品、(販売)チャネル、海外展開における重なりが少なく、むしろ補完関係にある。したがってお互いの強みを活かし、素材、研究開発、マーケティング、生産、販売ネットワークなどすべてのバリューチェーンをより強固にすることで、事業の展開スピードをグローバルで加速できる。さらに、身体の内と外の両面から美しさを求めるお客様の健康ニーズに対してもシナジーが見込まれる。今後は、より幅広い分野で多くの社会課題を解決していきたい」と説いた。

一方、キリンの傘下に入ったファンケルは「今回の資本業務提携は、美と健康の両事業で高いシナジー効果が期待できる。今後、両社がそれぞれのブランド力や研究開発力、販売力を活かし、強力にタッグを組み、世の中にない画期的な商品・サービスを提供していく」と強調した。その一例として「素材の吸収を高めるための微細粒化技術をはじめ、ゆっくりと吸収させるためのコーティング技術、味の改良のためのマスキング技術などさまざまな加工技術を持っている。これらの技術をキリンの医や食などの技術と組み合わせてシナジー効果を発揮していきたい」(島田和幸社長)とした。

ヌーヴェル日本版(LNE)公式サイトwith美容経済新聞 2025年6月正式リリース!

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加藤勇

顧問記者/ジャーナリスト

元日刊工業新聞編集局部長。欧州、米国特派員を含め記者歴通算45年。ベンチャー、中小・金融政策専門経済ジャーナリスト。「レバレッジ金融至上主義の崩壊」など著述多数。本誌では主に、経済部門、企業取材を担当。

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