執筆：Tiphaine Modeste（ 美容・ウェルネス分野のコンサルティング企業『E.S.B.E』 ディレクター）
毎年、同じ状況になります。12月は嵐のように訪れ、来店客が一気に増え、時にはその勢いに押されて疲れが勝ってしまい、クリスマスの雰囲気を楽しむ余裕がなくなることがあります。 しかし、しっかり準備を整えておくことで、この時期は売上を大きく伸ばすチャンスとなり、さらに皆さん自身やお客様、そしてチームにとって前向きなエネルギーを生み出す期間にもなります。ここでは、重要な時期を事前に把握し、整理し、成果につなげるための実践的なチェックリストをご紹介します。
顧客ニーズに応えるギフト提案の最適化
ギフト需要を踏まえた目標設定の進め方
- 勢いだけで進む前に、まずは達成したい目標を明確にしておきます。
- 12月にどの程度の売上を目指すのか
- ギフトセットやギフト券、製品販売でどの割合を構成したいのか
- 年初の落ち込みを防ぐため、一月に向けてどのような戦略を準備するのか
これらを紙に書き出すことで、進むべき方向が明確になり、チーム全体を同じ目標へ導きやすくなります。
クリスマス商戦で効果を生む提案づくりのポイント
膨大なカタログは避け、2つか3つの主力提案にまとめます。
- 低予算向けの「ディスカバリー」ギフトセット
- 特別感を求める顧客のためのプレミアム施術
- 需要の高い柔軟なギフトカード
アドバイスとして、必ず「次につながる提案」を加えます。例えば、クリスマスギフトセットの購入者に対し、一月に利用できる施術の割引を提供する方法です。こうした仕組みは勢いを継続させる効果があります。
士気を高める効果的なブリーフィング手法
クリスマスは販売のピークであると同時に、人としての負荷も高くなります。最前線で対応するチームには、モチベーションとサポート、そして適切な指針が欠かせません。
目標共有と励ましが現場の連携を促すポイント
毎日10分程度のブリーフィングで十分です。
- その日の目標
- 優先して案内するプロモーション
- 重要事項の再確認
しかし、単なる業務連絡ではありません。これはチームとつながる大切な時間でもあります。チョコレートを配る、クリスマス音楽を流す、短い励ましの言葉を添えるなど、少しの演出で雰囲気は大きく変わります。
サロン経営者の中には、12月の毎朝を決まった習慣で始める人もいます。 例えば、心に響く言葉を一つ共有する、または前日の小さな成功をメンバー全員で簡単に報告し合う方法です。こうした小さな習慣がチームの結束を生み、前向きなエネルギーを保つことにつながります。
クリスマス期に効果を発揮するチャレンジ企画の活用
クリスマスビンゴは、簡単で効果的なゲームです。メンバーそれぞれが、製品販売、ギフトカード、特定メニューなどのマスが並ぶビンゴシートを持ちます。<一列を達成するごとに報酬が得られます。<結果として、モチベーションと活力が生まれ、明るく前向きな雰囲気が育まれます。
このコンセプトは応用することもできます。たとえば、売上の達成ごとにサプライズを開封できる「チーム版アドベントカレンダー」や、休憩室に進捗を掲示する「売上の温度計」を設置して、チーム全体の成長を可視化する方法があります。
この手のチャレンジは、成果を高めるだけでなく、チームワークの強化にもつながります。
労いが生むチームの活力
評価の力を軽視してはいけません。チームが節目を達成した際には、必ず労いの言葉をかけます。ささやかな気遣い（チョコレートの差し入れ、ちょっとした集まり、個別のメッセージ）は、メンバーの意欲を大きく高めます。経営者の中には、チームの働きを称えるために記念写真やストーリー投稿をSNSで共有する人もいます。
こうした取り組みは誇りを生み、チームスピリットを育て、お客様からの親近感にもつながります。 多くの来店客は、仲の良いチームの裏側を見ることを好むものです。
クリスマスの感性価値を高める店舗演出の工夫
お客様は施術や製品だけを求めているわけではありません。特別な体験を望んで来店されます。 細部にこだわるほど、その印象は強く残ります。
店頭ディスプレイで季節感と体験価値を高める工夫
クリスマスの魅力は、まず感覚的な心地よさにあります。お客様が扉を開けた瞬間から季節の空気を感じてもらえるように整えます。
店頭ディスプレイ
店頭は最初のコミュニケーションツールです。ギフトセットやギフトカードを宝物のように配置し、光やガーランド、鏡を効果的に使います。人目を引くディスプレイは、購入予定がなかった方にも来店のきっかけを与えます。
店内装飾
過度な装飾は必要ありません。選び抜いたアイテム、例えばツリー、香りの良いキャンドル、ゴールドの差し色などで十分です。目指すのは、居心地が良く温かみのある上質な雰囲気です。
音楽
穏やかなクリスマス調の音楽を用意します。ただし、よく知られた定番曲ばかりだと重く感じられることがあります。ゆったりとしたインストゥルメンタルを選ぶと、心地よく感覚体験を支える効果があります。
ちょっとしたおもてなし
ホットチョコレート、クリスマスティー、あるいは小さなスイーツを提供するだけでも嬉しい驚きになります。大きな負担にはなりませんが、印象に残るひと工夫です。
こうした細部の積み重ねが、来店体験を記憶に残るものへと変えていきます。
香りや仕上げを活かした特別施術の魅力
クリスマスは、自店ならではの特別なメニューを打ち出す絶好の機会です。
たとえば
- シナモンとオレンジの香りを使った温感オイルによるリラクゼーション施術
- 年末のイベント準備に適した華やかな仕上げメニュー
- 忙しい方のための短時間のリフレッシュ施術
こうした“シグネチャー体験”が店舗の目玉となり、口コミにつながり、特別メニューを目的に来店する方も増えます。興味を引き、来店数を高める効果があります。アドバイスとして、これを「クリスマス限定ギフトカード」として提供すると、季節の主力商品にもなります。
忙しい12月に寄り添うギフト提案の進め方
12月は何かと忙しい時期で、お客様も予定や買い物に追われています。だからこそ、あなたのお店が心強い味方になれます。
施術の最後に
「クリスマスプレゼントはもう揃いましたか」
と問いかけてみてください。
8割ほどの方は、まだ揃っていないと答えます。そこから自然に会話を広げます。
– 「もしよければ、ギフトセットをご案内できます。時間の節約になりますよ」
– 「カスタマイズできるギフトカードもご用意しています。ご家族にも贈りやすいですよ」
これは“売り込む”というより、繁忙期の負担を減らす“サービス提供”です。お客様は安心して帰ることができ、あなたの店舗の売上も自然と伸びます。
冬の需要に応える推し商品の効果的な訴求方法
クリスマスは、無計画に販売する時期ではありません。お客様との一つひとつのやり取りが貴重な機会になります。
アップセルとクロスセルを習慣化する
クリスマスは、お客様が提案を受け入れやすい特別な時期です。喜ばれる贈り物を探しており、良い理由があれば、いつもより少し多く支払う気持ちになっています。
アップセルとは
お客様が選んだメニューの上位バージョンを提案することです。例として、一時間のフェイシャル施術のギフトカードを購入しようとしている場合、1時間30分のより充実したメニューを案内します。マッサージの追加や特別なリチュアルが含まれることで、贈り物としてより喜ばれる印象になり、販売単価を上げることができます。
クロスセルとは
メインの選択に自然に合う関連商品を提案することです。例として、全身リラクゼーションの予約があれば、施術後のリラックスに使える香り付きキャンドルや、同じ香調のホームケア用オイルなどを紹介します。ギフトカードに短期コースを特別価格で組み合わせたり、施術効果を持続させる化粧品を添えることもできます。
クロスセル候補を共有して販売提案を習慣化する方法
クロスセルの候補と説明ポイントをリスト化し、休憩室に掲示しておくと、チーム全員が継続的に練習でき、販売提案の習慣が身に付きます。別の具体例として、フェイシャルのギフトカードを購入するお客様には、25ユーロのヘッドリフレッシュ施術を提案する方法があります。小さな追加額ですが、23月に1日5～10件のクロスセルが成立すれば、売上全体への効果は非常に大きくなります。
一言添える提案が隠れた需要を引き出す効果
この取り組みはシンプルで、非常に効果があります。チームメンバーそれぞれが12月の「推し商品」を一つ選びます。対象としては以下のようなものを考えます。
- 冬の季節に適したハンドクリーム
- 手軽に贈れるピローミストや香りのキャンドル
- 年内に売り切りたいギフトセット
重要なのは、無理に売ることではなく、必ず一言紹介する習慣をつくることです。
「この冬の私の推し商品で、毎日愛用しています。気に入っていただけると思います」
この一言だけで、
- 会話が自然になり、提案のハードルが下がる
- お客様が自分では見つけられなかった商品に出会える
- 注力したい在庫を効果的に動かせる
というメリットが生まれます。
さらに、毎月初めにチームで「推し商品」を選ぶ小さな儀式を設けると効果的です。メンバーが理由や紹介方法を共有し、全員が納得して選ぶプロセスは、チーム力の強化にもつながり、店内全体の接客トークに一貫性が生まれます。
クリスマス期の顧客体験を高める運営ポイント
クリスマスは、忙しさに飲み込まれる期間にもなりますが、同時に大きな成長のチャンスでもあります。 両者の違いをつくるのは、事前の準備です。<最後の瞬間まで待たず、目標を設定し、チームを巻き込み、顧客体験を磨き上げることが重要です。そして忘れてはいけないのは、お客様が求めているのは施術だけではなく、年末の慌ただしさから離れる特別な時間であるという点です。小さな準備の積み重ねこそが、クリスマスシーズンの成果を大きく左右します。
