社団法人日本エステティック協会 理事長庄司礼子さん

インタビュー

監修:美容経済新聞

「尽くす心の大切さ」を学ぶ

花上:お客様の身体に触れ、心に寄り添うエステティシャンにとって、「つくす心」の姿勢は本当に大切なものだといえますね。

荘司:おっしゃる通りです。人の手からはさまざまな心が伝わります。
相手のことを思い、理解し、手を通じて、その心を伝えなければなりません。私が理事長を務めております日本エステティック協会では現在、まさに「つくす心」の究極といえる「ソシオエステティック」の普及のための活動を行っています。

ソシオエステティックとは、病院や老人ホームをはじめとした各種福祉施設などで、患者や入所者に対してエステティック施術やメイクアップを施し、病状の治癒・改善の促進、疎外感や不安感の緩和、入院環境の改善などに寄与する技術のことをいいます。医療や福祉の分野で、エステティックの施術を使って肉体・精神の病気に苦しむ人を癒し、励まし、その人が本来の自分を取り戻すための支援をする活動です。たとえば、激しい体の痛みで何日も休むことができなかった末期の患者様が、さすったりなでたりしているうちにお眠りになったこともあります。また、肺がんで呼吸が苦しそうだった方が、ハンドケアの途中から気持ち良さそうにウトウトされ、ケアが終わって「ありがとう」と頭を下げてくださったという話しも聞きました。ソシオエステティシャンは高度な医療と福祉の知識と経験が求められるほか、社会的、人道的、福祉的道徳を兼ね備えていなければなりません。
フランスではソシオエステティシャンはれっきとした国家資格で、その活動は人間の尊厳にかかわる意味のあるものとして、社会の認知を受けています。

花上:エステティックの技術が医療の分野で貢献されているわけですね。ソシオエステティックの普及のため、日本エステティック協会ではどのような活動をされているのでしょうか。

荘司:日本エステティック協会では、2004年8月にフランスのCODES(注記1)と呼ばれるフランス国家が認定するソシオエステティシャン養成機関と契約を締結し、2007年秋からはCODES 認定ソシオエステティシャンの養成プログラムをスタートさせました。
1年半にわたるカリキュラムを通して、精神医学、心理学、終末医療、緩和ケアなど、さまざまな医学の知識を身につけるとともに病院・老健施設での研修や実習も行います。エステティックのケアは患者の身体に触れ、心に近づくものです。医療の及ばない範囲をお手伝いするために、医療とエステティックの協力が大切です。

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花上:患者様やお年寄りの方のために、エステティシャンだからこそできることがあるのですね。とても有意義なことだと感じます。

荘司:日本では、エステティックといえば、痩身や脱毛など、見た目の美しさをととのえるもの、という概念が根づいていますが、本来、エステティックは精神的な安らぎや癒しも提供するものでなくてはなりません。エステティックの持つさまざまな効用や効果は、美容を目的にするだけでなく、もっと社会的に活用させていくべきだと考えます。それによって、現在のエステティックにもたれるイメージや実態を改善し、エステティシャンの社会的認知度や地位を向上させることができるのではないでしょうか。

花上:たしかに、もっと視野を広げてみると、エステティックの技術を幅広い分野で活用できそうですね。エステティックがとても奥深いものであることがわかります。今後のソシオエステティックのますますの普及を心より願っております。お話のつづきは次号でお伺いさせてください。

注記1:Cours d’Esthetique Privé à Option Humanitaire et Sociale = 人道的、社会福祉的エステティック選択講座

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荘司礼子 Reiko Shoji

Profile
島根県出身。
1968年学校法人国際文化学園 国際文化理容美容専門学校卒業後、職員に就任。
以来、学生指導、学生教育に尽力し、理容師・美容師を多数輩出してきた。

1989年「教育功労賞」
1992年「美容教育功労賞」
2000年には理容師・美容師養成功労者として「厚生労働大臣表彰」を受賞。
2007年に同校渋谷校校長に就任。理容師・美容師の養成に尽力するとともに、日本の伝統文化継承にも力を注ぐ。

一般社団法人日本エステティック協会 理事長。
学校法人国際文化学園 国際文化理容美容専門学校渋谷校 校長。

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