東京栄養士薬膳研究会、都民の健康づくり運動特別講演会を開催

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2018.10.1

編集部

東京栄養士薬膳研究会(代表:海老原英子氏)主催の第12回都民の健康づくり運動特別講演会「治未病の対策~西洋医学と中医学からの検討~」が9月30日、東京都内で開催され、講師として招かれた千葉大学大学院 薬学研究院 教授の斉藤和季氏が「植物はなぜ薬をつくるのか」、高級中医薬膳伝授師の和田暁氏が「食薬を使った養生薬膳料理」と題してそれぞれ講演した。

前半の講演では、斉藤氏がモルヒネとして使われているケシや、アスピリンとして使われているヤナギなど薬の原料植物を紹介。これら植物の化学成分が健康をもたらすなど、植物は人間に恵みを与えているように見えるが、「人間から見た一方的で勝手な思い込みで、植物は人間に恵みを与えているわけではない」(斉藤氏)と強調した。

実は、植物が薬となる化学成分を作る理由は、近年の分子生物学やゲノム科学という先端科学技術の発展に伴って解明されてきており、「植物の巧みな生存戦略」(斉藤氏)にあるという。

具体的には、植物は動物と違って、「土に根を生やして動かないという生き方を選択」(斉藤氏)したため、1)太陽光を使った光合成により、生存に必要なエネルギーと物質を自ら生産、2)光合成で作られた化合物から化学構造が複雑で多様な成分を作り、外敵やストレスから身を守る、3)虫を引き寄せ受粉を助ける(生殖の効率化)——と3つの生存戦略をとった。

このうち2)については、具体例として、漢方薬の7割の処方に使われている生薬の甘草を挙げて解説。主成分のグリチルリチンは、肝機能改善作用のある強力ネオミノファーゲンシーなどの薬のほか、お菓子など多岐にわたって応用されているが、実は「グリチルリチンは甘草の根の周辺に多く蓄積されており、土からの外敵である微生物や虫などから身を守る役割を果たしている」(斉藤氏)。

さらに、生薬の苦参の成分の1つであるキノリチジンアルカロイドは、イナゴの食害予防になるが、「アルツハイマー病にも応用が可能」(斉藤氏)という。

このように、植物は“精密化学工場”として多様な化学成分を作るという生き残り戦略を、長い歴史の中で発達させてきただけで、「人間は(その一部の化学成分を)薬として少しお借りしているだけに過ぎない」(斉藤氏)とした。

後半の講演では、和田氏が“神農本草経”にある食薬の種類を解説した後、季節と体質に合わせた食材と薬膳料理を紹介し、「未病予防の薬膳を毎日の食卓に生かしてほしい」(和田氏)と訴えた。

例えば、秋の薬膳養生としては、呼吸気道と皮膚を潤す食材を選択すべきとして、梨など甘酸の果物や水分の多い野菜、白木耳、百合根などを挙げた。また、“化痰止咳”作用のある大根、かぶ、銀杏などを紹介。具体的な薬膳料理として、咳対策になる「百合根の銀杏ソース」や、乾燥咳向け「梨のふわふわゼリー」などを提案した。

一方、体質に合わせた薬膳については、「気虚」「陽虚」「気滞」「血虚」「血瘀」「津燥」「陰虚」「痰湿」の8つの体質ごとの食材と薬膳料理を紹介。例えば、ほてり、のどが渇きやすい、ドライアイ、肌にカサカサ皺が出やすいなどといった「津燥」体質に対しては、潤う食物として水分豊富な野菜、果物、ウーロン茶などを勧めた。具体的な薬膳として「白木耳と五味子のフルーツポンチ」などを提案した。

また、「陰虚」体質には、ネバネバ食材、種実類、ベリー類のほか、スッポンや牡蠣などの黒色食材を勧めた。具体的な薬膳料理としては「大和芋と枸杞子のスッポン煮凝り」などを提案した。

参考リンク
東京栄養士薬膳研究会

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