睡眠不足はアルツハイマーのリスクとなる可能性を示した研究結果が4月13日、米国国立保健研究所（NIH）からプレスリリースされた。研究の詳細は米国科学アカデミー発行の機関誌「PNAS」オンラインに掲載されている。アルツハイマー病の高齢患者では、健康な高齢者と比較して脳内のβアミロイドが約43％増加していると推定されている。また、マウスを使った実験では、急性睡眠不足がβアミロイドレベルを上昇させることが分かっている。

今回、NIHの研究者らは、βアミロイドの蓄積と睡眠との関連性を、睡眠を取った後および睡眠不足（31時間起きている状態）後の脳の状態を陽電子放射断層撮影法（PET）で調査。対象者は健康な22歳〜72歳20名だった。その結果、アルツハイマー病の初期段階で特に傷害を受けやすい領域である視床および海馬を含む脳領域で、睡眠不足後にβアミロイドの約5％増加が見られた。βアミロイドの増加が大きいほど、睡眠不足後に気分の悪化がひどかったことも報告された。この試験は、ヒトにおけるβアミロイドのクリアランス（排出）において睡眠が重要な役割を果たす可能性があることを初めて示したものという。

研究者らは、睡眠不足がβアミロイドを増加させる一方で、βアミロイドの増加が睡眠障害を引き起こす可能性もあり、この関係は「双方向」であることも注意しなければならないとしている。また、試験参加者の増加したβアミロイドが睡眠後に低下するかどうかは、まだ不明であるとしている。