【連載】大手化粧品会社の研究(60)セーレンの会社研究 ~繭から天然美肌成分を抽出~(上)

2018.11.26

特集

編集部

繊維メーカーのセーレン株式会社(東京都、福井県の2本社制)は、繭から抽出した天然美肌成分「ピュアセリシン」や「ピュアセリシンラメラTM」を開発し、これらの美肌成分を配合した美容液「コモエース」等を商品化して通販、薬局、美容室等で販売している。

同社は、1889年の創業以来、社名の由来にもなっている絹の精練(せいれん)作業(絹に光沢を出すための水洗い)を行ってきた。
精練作業を行う職人の手は、厳しい水仕事にも関わらずなぜか、いつも白く美しくみずみずしくその謎を解明すべく研究を進めてきた。
研究の結果、絹のもと「まゆ」に含まれる「セリシン」という天然たんぱく質が職人の手を守っていたことを突き止めた。同時に、繭(まゆ)は蚕(かいこ)を乾燥や紫外線、酸化など自然界の外的なストレスからやさしく守る役割を果たしており、繭の表面を覆う「セリシン」がその役割に大きく関っていることも解明した。さらに、分子量のみを精製した「ピュアセリシン」を特許製法で開発し、1個の繭からわずか0.03グラムという希少な抽出に成功した。

セリシンの特徴として、人間の肌にもともと存在する天然保湿因子(NMF)に似たアミノ酸で構成されており、肌への刺激が少なく、浸透がよい。また、セリンという保湿性に優れたアミノ酸はNMFより多く含まれ、保湿効果が高い。
このように同社は、研究開発グループが中心となって平成3年に世界に先駆けてセリシンの抽出・精製に成功し高純度製法技術を確立した。

以降、大学や研究機関と共同で多くの学会で論文を発表。近年では、細胞保護効果を応用して「IPS細胞保存液」を開発するなどその可能性を広げている。
肌と同様のラメラ構造を持つ美容成分「ピュアセリシンラメラTM」の開発(2018年9月)も注目される。
「ピュアセリシンラメラTM」は、肌保湿を担う天然保湿因子(NMF)と細胞間脂質に着目して開発したもの。
ピュアセリシンラメラ(TM)は、生体内類似成分であるピュアセリシン(TM)、リン脂質(天然レシチン)、天然オイルから形成されたラメラ構造体。
同社は、ラメラ構造体の形成を促進することを見出すとともにラメラ構造体の安定化に関与している可能性を明らかにした。
これらの研究内容は、2018年4月の第65回日本シルク学会研究発表会で発表し注目を集めた。

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