【連載】化粧特許と知的財産権⑭ホソカワミクロン、PLGAナノ粒子を化粧品へ応用展開(中)

2019.07.23

特集

編集部

ホソカワミクロンは、マテリアル事業部が中心となって顧客(製薬企業、大学・医学部)の薬物物性に応じてPLGAナノ粒子の設計、物性評価、調製条件の最適化等を請負うなど収益事業に打って出た。
各製剤のGMP量産条件や品質試験法の最適化、安定性試験等の開発業務を受託。同時に、製剤の上市では、開発・製造対価(ロイヤリティ、技術料)を得るなどのビジネスモデルを確立しで事業の成長を目指した。

折しも、県立広島大学らとの共同研究で、ヒト摘出皮膚片を用いた有用成分の肌奥への浸透性が改善されたことや成分の徐放に伴う作用の持続化を可能にする機能を有することなどが明らかになったこと。また、PLGA の加水分解の過程で生成する乳酸とグリコール酸が穏やかな角質層の細胞代謝(ターンオーバー)促進作用を有することも確認され角層バリア機能の改善や美白など美容全般を司るターンオーバー制御剤としての効果も加わって、一挙にPLGAナノ粒子の化粧品への応用展開に乗り出した。知的財産権の拡大・活用を図る動きをより鮮明にした動きといえる。

化粧品への応用は、PLGAナノ粒子のユニークな特徴である「毛穴ルート」による薬物の浸透促進性と毛穴内部での持続効果を用いた「抗ニキビPLGAナノ粒子」の開発を進めた。
開発にあたって抗アクネ菌成分を封入したPLGA ナノ粒子を用いてニキビの抑制作用を検証した。
検証試験では「アクネ菌殺菌成分封入PLGAナノ粒子」(成分濃度0.001%)と「アクネ菌殺菌成分単体」(成分濃度0.2%)のサンプルを1 日2回、洗顔後に塗布した。その結果,成分単体の場合,ニキビの状態に改善傾向は見られなかった。半面、PLGAナノ粒子を用いた場合では、200 分の1の殺菌成分濃度にも関わらずニキビが沈静化し,新たなニキビの抑制効果も確認され,PLGA ナノ粒子のニキビへの有効性が明らかとなった。

こうした検証を踏まえて同社は、2004年10月に美肌化粧品(美白・アンチエイジング)としてビタミン誘導体封入PLGAナノ粒子を配合した美容液「ナノクリスフェア」を上市。続いて2006 年5月からは、育毛成分封入PLGAナノ粒子を生薬ローションと用時混合し頭皮へ塗布する育毛剤「ナノインパクト」を開発し、販売を始めた。

これらの商品販売は、これまで自社通販(直販)を中心に展開してきたが、ナノインパクトの一部は、サントリーウエルネス株式会社(東京都港区)での通販が始まり販路が拡大しつつある。すでに、DDS機能を有するPLGAナノ粒子を配合した化粧品・育毛剤は、市場でオンリーワン商品となっている。

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