花王がパナソニックアプライアンス社と共同で開発した小型吐出機「ヴェールディフェーザー」は、花王の基盤技術「ファインファイバーテクノロジー」を駆使して開発した。
ファインファイバー技術は、化粧品用のポリマー溶液を専用の機器で肌に噴射することで、肌面に極細繊維で積層型の極薄膜を形成する技術。これにより、体のさまざまな部位の三次元形状や面積に合わせた膜を肌表面に自在に形成できる。
積層型の極薄膜は、繭のような極細繊維のため、肌の動きに柔軟に追随し、肌表面を均一に滑らかに整える。また、液体を吸い込む「毛管力」があるため、使用する化粧品製剤の保持力や均一化に優れる。

同社は、ファインファイバー技術について「肌に吹きかけることではがれにくくなり、あらゆる領域で活用が可能になる」と強調。ファインファイバーテクノロジーを応用することで、毛穴、色ムラ、シミなど気になる箇所をしっかりカバーして美しく自然な肌仕上がりが得られるベースメイクやボディメイクなどの提案に力を入れる。
引き続き、仕上がりの持続性を高める一方で、落としたいときには簡単にはがせる、相反する性能が両立する膜の特性を生かしてメイクアップの領域でも新たな価値創造に挑戦する。 また、技術的に化粧品の限界を超えて人を治す治療領域までもっていく方針。

同社は、ファインファイバー技術の方向性として極細繊維と合わせて使う製剤をスクリーニングし、それとの組み合わせに最適な機器を新たに開発することで、用途の拡大を目指す。将来的には、ケミカルピーリング、レーザー治療後のケアや損傷を伴う皮膚疾患に対しての治療貢献などを想定している。また、痣（あざ）や傷あとなどを隠すカバーメイクやアピアランスケアといった分野にも開発を広げる意向。

同社にとってファインファイバー技術は「RNAモニタリング技術」（皮脂RNA＝リボ核酸から得られたデータに機械学習・深層学習＝ディープラーニング などのAI技術を応用して、肌状態にコミットする美容カウンセリングサービスの構築）、「クリエイティッドカラー技術」（パッチテストの必要がなく、髪に負担をかけずに染められる）、「バイオ IOS技術」（非常に高い水溶性を有しながら、油になじみやすい性質を併せ持つ界面活性剤）、「パッケージリサイクリエーション技術」（リサイクルと新たな価値を創造する技術）など5つの基礎研究の一角として花王グループを支える技術イノベーションに位置付けている。