【連載】化粧品が起こすイノベーション・この技術に注目④AI・I0Tは、新しい化粧サービスを創出(下)

2020.02.4

特集

編集部

株式会社ポーラ・オルビスホールディングス(東京都中央区)傘下の株式会社ポーラ(東京都品川区)は、全国の店舗で肌解析技術「ポテンャル分析」(写真)を導入し、一人ひとりに合ったスキンケアのサービスを始めている。

分析では、声を発することにより生じる肌の縦・横の動きをタブレットで計14秒間撮影する。1秒の動画を60枚の静止画に変換し、肌の動く速さや方向といった約2000種類の特徴を選択するなどして合計170万項目のデータを抽出する。
これらのデータを人工知能によって導き出された推定式で解析し、肌の表面の「表皮」やその下の「真皮」、「皮下組織」の弾力やコラーゲンの構造等を推測する。その結果から、老化の進行度合いやしわ、たるみ、くすみなどの肌トラブルを予見する。

術開発は、表情の動きから内部構造を推測することがポテンシャル分析の開発につながった。老化が進んでいない状態では表情筋と肌がスムーズに連動するが、老化した肌ではタイムラグ(ずれ)が生じる。研究で、肌内部の状態が表層部の動きの特徴となって現れることを明らかにしたことが大きい。
延べ300人以上の女性から得た肌の動きの特徴と肌内部の状態を関連つけ、機械学習で表情を作る際の肌の動きから内部構造を明らかにする推定式を構築。これまで静止画では解析しきれなかった肌の内と外の連動性を測定できることを実現した。

ここへきて同社は、人工知能技術を使って肌の状態と健康状態の相関関係の解明など新たな研究開発に着手した。AIを用いた研究では、化粧品を肌の手入れにとどめず肌状態を見ることで、睡眠不足かどうかを判定するなど「肌」を活用して新たな価値を生み出す。2020年以降に、肌状態から感情や健康状態を把握するサービスや化粧品への応用を目指す方針。

花王株式会社(東京都中央区)と株式会社Preferred Networks(東京都千代田区、PFN)は、花王が開発した皮脂RNA(リボ核酸)モニタリング技術の実用化に向けた協働プロジェクトに取り組んでいる。
第一弾として、皮脂RNAから得られたデータに機械学習・深層学習(ディープラーニング)のAI技術を応用して肌状態にコミットする美容カウンセリングサービスの構築を目指す。
花王の皮脂RNAモニタリング技術で得られた情報にPFNの機械学習・深層学習技術を用いて、高度な予測アルゴリズムを開発する。これにより、これまでの肌測定・解析技術では把握できなかった肌内部の状態を知ることや将来の肌ダメージのリスク評価を可能とする。また、仏ロレアルは、フェイスブックと連携して仮想メイクの本格サービスに乗り出している。

ともあれ、大手化粧品各社等がビッグデータをもとにAIやI0T技術を使って肌の状態、老い等を予測し、個人に最適なスキンケアを提案する動きが活発だ。
化粧品業界は、これまでのようなブランド力だけで化粧品販売が伸びていく時代ではない。国内需要の鈍化で成長が停滞する中にあって個人の掘り起こしによって競争を勝ち抜いていく厳しい淘汰の時代に入った。特に、化粧品の小売販売はAIやI0Tで変革を余儀なくされている。その意味で、AIとI0Tは、化粧品の新たなサービスを創出するイノベーションを象徴する。

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