【連載】台頭する創薬・再生医療ベンチャー【9】 アールテック・ウエノ、脱毛症治療薬ライセンス交渉へ

2013.12.26

特集

編集部

創薬ベンチャーのアールテック・ウエノ(ジャスダック上場)は、男性型脱毛症治療薬(塗布剤)のライセンス交渉に乗り出した。また、第1の成長エンジンに位置付ける慢性便秘症薬「アミティーザカプセル」の受託製造事業が順調で、今期(2014年3月期)業績を上方修正し、売上高が前期比8億円増の53億円を見込むなど好調だ。

男性型脱毛症治療薬は、アンチエイジング領域の生活改善薬としてまつ毛貧毛症と合わせて開発に取り組んでいる主要開発パイプライン。男性型脱毛症用に塗布剤がないことに着目し、緑内障治療薬の副作用を応用して開発した。化合物開発コード名は「RK-023」で、2010年に前期第2相臨床試験(健常者対象の安全性、薬理効果)が完了。現在、投薬量や投薬方法を決定する後期第2相臨床試験に移行する段階にある。

「RK-023」の前期第2相臨床試験では、脱毛症患者48名に「RK-023」を13週間頭皮に塗布して安全性、有効性を評価した結果、プラセボ(偽薬効果)と差異は見られず全身への作用は少ないなどの安全性を確認。また、有効性については、育毛剤の評価法「フォトトリコ試験」により成長期毛数の減少抑制が確認された。

同社は「RK-023」の前期第2相臨床試験完了に伴い、開発権や商業化権などを譲渡することで、販売額の一定比率をロイヤルティ収入として受領し、収益確保に繋げる。同社は「グローバル製薬企業とライセンスアウト交渉を進めている。現段階では、譲渡先が決まっていない」としているが、グローバル製薬企業に譲渡が確定した場合、育毛剤各社に少なからず影響を与えそうで今後の動向が注目される。

業界有力企業の調査では現在、日本人男性の3人に1人、1,260万人が脱毛症に悩んでいると推計。また、国内育毛剤市場規模は、2011年度で約599億円(売り上げベース)にのぼると見込んでいる。市場占有率は、大正製薬が30%、MSD社(旧万有製薬)26%、花王13%と3社で市場全体の約70%を占める。

業績も好調だ。現在、同社の主力製品で収益源になっているのが緑内障・高眼圧症治療薬「レスキュラ点眼液」(2004年10月参天製薬国内販売)の販売と、スキャンポ社開発の慢性便秘症薬「アミティーザカプセル」(写真)の受託製造事業。特に、第1の成長エンジンに位置付ける「アミティーザカプセル」の収益貢献度が大きい。

「アミティーザカプセル」は、2004年10月に開発元のスキャンポ社と米国市場(2006年1月製造・販売承認)で「アミティーザカプセル」を販売する武田薬品の3社間で製造供給契約(独占的製造供給権)を結び現在、三田工場(三重県)で生産している。

今期(2014年3月期)業績は、武田薬品とアミティーザカプセルの納入単価交渉で、従来比2割アップを実現したことが奏功して今3月期第2四半期に上方修正し、売上高53億円(前期45億5000万円)、営業利益12憶8500万円(同7億8000万円)、当期利益8億5500万円(5億6000万円)と増収増益を見込む。

引き続き業績は、上昇局面をたどる。特に、スキャンポ社がアミティーザカプセルのグローバル戦略を加速し、スイスや英国において慢性特発性便秘症治療薬として販売承認を取得。同時に、北米地域でアミティーザカプセルの新たな適応として非癌性疼痛患者を対象としたオピオイド(鎮痛)誘発性腸機能障害治療薬として追加新薬承認を取得したこと。また、日本国内でアミティーザカプセルを販売(2012年6月製造・販売承認)するアボットジャパンの販売伸長などを要因とした受託生産の拡大。さらには、第2の成長エンジンに位置付け2016年度中に承認・販売を計画する網膜色素変性(網膜の色素沈着で視力が低下する症状)治療薬「オキュセバ」(開発コードUF-021)や第3成長エンジンに位置付けて2015年度中にライセンスアウトを計画する重症ドライアイ(目の角膜や結膜に傷がつく症状)治療薬(同RU-101)を含めて業績をさらに押し上げる。2016年3月期の売上高は、60億円に達する見通し。

同社の設立は、1989年9月。2001年に上野製薬から「レスキュラ点眼液」の製造・販売業務を継承。以降、眼科、皮膚科領域での創薬開発やレスキュラ点眼液を中心とした製造・販売事業、アミティーザカプセルの受託サービス事業を展開。特に、眼科領域の創薬開発に強みを発揮する。

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アールテック・ウエノ

 

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