【連載】開花するか遺伝子(DNA)ビジネス(1)細胞、染色体の検査法確立

2013.03.29

特集

編集部

新たな市場遺伝子ビジネスになだれ込む

日本経済の成長分野として期待される“医療”“と“ヘルスケア”の推進役を担う遺伝子(DNA)ビジネスが活発化してきた。遺伝子検体を収集・分析して病気の治療や予防、新薬の開発、親子鑑定、犯罪捜査などに役立てるもの。
特に、DNA検査・解析装置やDNAチップ使用のDNA検査の需要が高まる一方、ここへきてノーベル賞受賞の山中伸弥京大教授が発明した万能細胞の受託試験サービスなどにもDNA検査機器が使用されるなど新たな市場を生み出している。

こうしたDNA検査機器や受託試験サ―ビスに多くの企業が参入、欧米企業を含めた合従連衡による開発、販売競争が一段と激化している。また個人から簡易検査キットで、血液や唾液など検体の提供を受けてDNA検査(私的鑑定)を代行し、遺伝子情報を基にフェイシャルエステに乗り出す美容サロンも現れるなど百花繚乱の状況となってきた。そこで、期待膨らむ遺伝子ビジネスの実態と今後を展望した。

細胞、染色体の検査法確立

ヒトの体は、タンパク質、糖、脂質、核酸などの物質で成り立っている。この物質の構成を規定しているのが遺伝子=DNE(デオキシリボ核酸)である。DNAは、人間の細胞全てに存在し糖やリン酸それにアデニン、チミン、グアニン、シトシンという四種類の塩基(酸と対になって働く物質=四塩基)から構成されている。
また、細胞の核の中に二重らせん構造をしているDNAが何重にも折り重なってできている多様なタンパク質からなる生体物質「染色体」がある。こうした遺伝情報を持つDNAや染色体を口内粘膜や数滴の血液、毛髪、体液、爪などの検体(試料)から採取して検査・解析することで、細胞内の遺伝子が細菌やウイルスの感染症や悪性腫瘍の有無、親子のDNA型認証、個人の脂質、アルコール体質の判別・鑑定などが実現できる。

これまで医療用診断を目的とした検査が主流となっていたが最近では、新たな製剤、創薬の開発や食品の遺伝子組み換え、肥満体質、肌の老化診断にも検査・分析領域が広がっている。
このような遺伝子を検査・解析して認証、鑑定するための検査・解析技術として現在、STR法やMLP法、ミトコンドリア(細胞の中でエネルギーを作り出す役割を持つ)DNA法、SLP法、Y染色体STR法の五つの検査法が主流となっている。

その中で、最もポピュラーな検査法がSTR法とMLP法。
STR法(ショートタンデムリピート=反復配数)は、遺伝子の特定領域での「反復配数」の違いを調べて親子関係や本人識別を認定する方法。個人の遺伝子の特定領域を百万倍程度に増幅する増幅技術と組み合わせることで、遺伝子の断片が大量に得られるため、数値判定(解析ソフト使用)が容易にでき低コスト、検査時間の短縮が図れるなどのメリットがある。

MLP法(マルチロ―カスプローブ)は、DNA指紋法とも呼ばれている英国発の検査法で、染色体に濃淡のある縞模様をした束(バンド)を解析するもの。今日のDNA鑑定の礎になっている。また、STR法と組み合わせて一ヵ所のロ―カルな染色体の遺伝子情報を読み取る(分析)「SLP法=シングルローカスプロ―ブ」も検査法として用いられている。

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