【連載】化粧品・美容関連ベンチャー企業の成長軌跡【7】新魚栄① ~鮮魚店が近大とスッポンコラーゲン開発、子会社で化粧品を販売~
2016.08.1
編集部
大阪の台所として名高い黒門市場で、60年以上にわたって鮮魚店を営む株式会社新魚栄(社長網干貴之氏)は、2013年8月に子会社クロモンコスメティックを設立し、化粧品販売に乗り出した。鮮魚店が化粧品ビジネスに参入したのは、極めて珍しいケース。
鮮魚店が化粧品ビジネスに新規参入する契機になったのは、約8年前に地元の大手百貨店からうなぎの出店依頼を受けたのが契機。
「どこからウナギを仕入れるか」―、最初に思いついたのが網干社長の出身母校・近畿大学の養殖ウナギだった。
ところが、近大の恩師より聞かされたのが、「近大はうなぎの養殖から撤退した」の一言。肩を落とす中で恩師は、国内で唯一、養殖に抗生物質を一切使用しないウナギを出荷する静岡県の水産高校を紹介してくれた。この紹介が結果として、地元百貨店に出店することに繋がった。
同水産高校では、うなぎ同様、抗生物質を与えずストレスのかからない飼育方法でスッポンを育てていた。このスッポンを食品として販売する方法について百貨店のバイヤーに相談。「スッポンはコラーゲンが多く含まれており化粧品に活用できる」とアドバイスを受け、これを踏まえて産学連携を促進する化粧品開発について、近畿大学の薬学部を訪問。2000年に共同研究することで合意した。
以来、新魚栄は、近大と共同で、スッポンからコラーゲンを抽出するより良い方法を検討するとともに、含まれるコラーゲンの質と含有量を調べた。その結果、甲羅のふちに当たる「えんぺら」と呼ばれる部位に最も多くのコラーゲンが含まれることを実証した。
一方で、コラーゲン抽出時にタンパク質が混じるとアレルギー反応を起こす可能性があるため、純度の高いスッポンコラーゲンのみを得ることができる抽出・精製方法を開発し、その技術で安全な高純度天然スッポンコラーゲンを抽出することを実現。合わせて、その品質をチェックする分析方法を確立した。写真にスッポンコラーゲンを示す。
この技術開発によって、化粧品原料のスッポンを高純度、高濃度の天然水溶性スッポンコラーゲン、加水分解スッポンコラーゲンとして抽出することを実現。同時に、分子量が大きい天然水溶性スッポンコラーゲンが肌の表面にコラーゲンのベールを作り、分子量を小さくした加水分解スッポンコラーゲンが皮膚の中に入り、天然ヒト型セラミドが皮膚の奥まで浸透する三重構造の処方を開発(設計)し、皮膚の表面と中から水分を保ち肌にハリと潤いを与えるスキンケア化粧品開発にメドをつけた。
現在、水産高校からスッポンを購入し、新魚栄で熟練職人が解体。コラーゲン量の多い部位だけを近大に届け抽出してもらっている。コラーゲンの抽出は、近大薬学部の卒業研究の一環になっている。また、売上の一部は、大学と高校に還元している。