【連載】化粧品・美容関連ベンチャー企業の成長軌跡【7】新魚栄② ~近大学生が商品開発でアイデアを提供~
2016.08.1
編集部
新魚栄は、近畿大と共同開発した化粧品を販売するため、2013年8月に子会社「クロモンコスメティック」を設立した。
第一弾の商品として2013年10月に純度の高いスッポンコラーゲンと天然麹(こうじ)によって生み出されたセラミド配合の「クロモン ジュエル美容液」を市場に投入した。2014年5月には、第二弾の商品としてスッポンコラーゲンを加水分解して分子を約100分の1まで小さくしたスッポンコラーゲンペプチドや人型天然フリーセラミド、天然精油、ブルガリア産ダマスクローズオイルなどを配合した「クロモン モイスチャーローション」を販売。2015年4月に第三弾の化粧品として保湿ミスト「セルシュシュ」を販売した。
保湿ミストは、商品の企画段階から近大の女子学生が参加し、消費者としての要望を商品開発に反映。商品名やパッケージデザインなどにもアイデアを出した。
アイデアは、商品の容量が50mlで、ノンガスタイプのスプレーボトルを使用。これは、飛行機内への持ち込み可能な条件を満たし、海外旅行などで女性が気になる長距離フライトの乾燥対策に配慮した。このアイデアから旅行セット化粧品の開発に繋げた。写真に美容液、ローション、ミストを示す。
同社は、現在まで一連の商品を含めて5品目を商品化して市場投入。販売チャネルも郵便局のネットショップや百貨店のオンラインショップ、コンビニ店など多様なチャネルで販売している。2014年12月には、東京原宿に進出し、生活雑貨店で販売している。
今回、近大と新魚栄の産学連携が実現した背景には、女性向けの商品開発で大学の基盤技術、応用技術に期待する企業側と企業の商品開発について技術移転(テクノロジートランスファー)したい大学側のニーズが合致したことが大きい。
近畿大は、民間企業からの受託研究実施件数で2013年度から全国1位に躍り出るなど、産学連携による収益事業強化に打って出ている。
化粧品開発は、女子学生の斬新な発想が欠かせないことから、新魚栄にとって大きな戦力となった。
ともあれ、新魚栄にとって発想が斬新な冒険者(アドベンチャー)を意味するベンチャーとして、新規事業の化粧品ビジネスに参入した英断は、アドベンチャーそのものである。
同社は、現在、鮮魚店の店頭でもスッポンコラーゲン化粧品を販売するなど異彩を放つ。魚を買いに来た顧客が化粧品も購入する様は、これまでのベンチャーの販売概念では考え付かない。そこに同社のベンチャーたる由縁がみえる。
引き続き、商品開発の意欲は高い。現在、近大と連携を図って2~3点の試作開発に取り組んでいる。