【連載】バイオベンチャーの光と影(3)バイオベンチャーの光と影
2013.05.29
編集部
ハンズオン支援新たな仕組み作りが焦眉の急
バイオベンチャーの成長バロメーターの指標になっているのがパイプラインと呼ばれる新薬候補をどの位開発し、業績向上に繋げて行くか、を見る重要な要素になる。
だが、バイオベンチャーの業績(表)は、軒並み赤字状態だ。事業の特質から新薬や再生治療薬を開発し成果が出るまで時間がかかるとはいえ軒並、屋台骨が揺らいだ状態にある。営業段階で減益となっているのは、製品や技術サービスがビジネスとして成立していないことを示す。バイオベンチャーの成長指標パイプラインと実態のビジネスが余りにも乖離している。
こうした中で、そーせいグループとユーグレナ、日本ケミカルリサーチ3社の業績好調が目立つ。
そーせいグループは、導入開発品の事業化を行う「株式会社そーせい」と慢性閉塞心肺疾患薬(COPD)の「NVA237」「QVA149」の開発とライセンス事業を行う「そーせいR&D株式会社」、それに、ナノ粉砕化技術による医薬品開発を行う「株式会社アクティバスファーマ」の3社を傘下に持つ持株会社。
同グループの2013年3月期は、増収増益を実現。2014年3月期は、ノルレボ錠の販売やCOPDのマイルストン収入、ロイヤリティ収入などで売上高28億円、営業利益9億5千3百万円、利益6億4千万円を見込む。
東大発ベンチャーのユーグレナは、サプリメント企業のイメージが強い。微細藻ミドリムシの培養技術で商品化したサプリメント、緑汁が好調で収益に貢献。今後、ミドリムシからどのようなバイオ創薬を作り出すか、注目される。
日本ケミカルリサーチは、成長軌道に乗った。前期(2013年3月期)業績は、成長ホルモン剤「グロウジェクト」とキッセイ薬品と販売提携している腎性貧血治療薬「エポ二チンアルファBS」の2製品を中品に医薬品事業の売り上げが136億円強に達するなど薬価引き下げを吸収した。今期(2014年3月期)の業績は、医薬品の売り上げ拡大と医療用・研究用機器の収益向上で売上高152億円、営業利益14億6千万円、利益10億円を見込む。
日本経済を活性化して行くためにベンチャーの輩出は欠かせない。医療分野の規制改革と合わせて新たなバイオベンチャーの登場に期待がかかる。
現在、上場を計画しているバイオベンチャーは、iPS細胞を利用した再生医療、創薬支援を行うリプロセル(横浜市)や2014年12月期中に上場を表明したSBIバイオテック(東京都)、それに、核酸医薬品の創薬支援を手掛けるシーンデザイン(大阪市)など先行き2~3年間で4社から5社が新興市場に上場する見通し。
今後、iPS細胞のビジネスが本格化される動きに合わせて再生医療分野のバイオベンチャーの起業と事業化が相次ぐ見通しで、上場に向けた投資意欲を鮮明にしてこよう。
政府も成長戦略にベンチャー輩出を掲げ事業資金の個人補償に代わる新たな融資制度を創設するなどして金融支援をして行く考えだ。しかし、ベンチャーが成長軌道に乗せるまで支援するハンズオンについて新たな支援の仕組み作りが焦眉の急だ。
起業から資金支援、販売まで一貫して支援するハンズオン支援をVCの歌い文句にするだけではなくベンチャーの成長発展を具体的に支援する販売や提携、技術、特許の実施権供与などを行う新たなプレイヤーを入れた制度と仕組み作りについて官民で一緒に考えることが求められる。
これまでのようにバイオベンチャーを単に投資の対象と捉え経済成長の牽引車ともてはやしてブームを仰ぐ時代から卒業しなければならない。ベンチャーを成長発展させて雇用の創出に繋げる橋頭堡を構築することが重要だ。