化粧品業界、CVC設立とベンチャー青田買い低空飛行化粧品業界、CVC設立とベンチャー青田買い低空飛行③ ~ベンチャーの技術を活用し協業化を図る共創の時代に~
2017.08.23
編集部
化粧品業界でM&Aによる企業買収を行っている企業は多いが、社内に戦略的な専門部隊CVCを設立して迅速にベンチャー投資(青田買い)している企業は皆無に等しい。
こうした中、株式会社資生堂(東京島中央区)は、2016年12月にCVC「資生堂ベンチャーパートナーズ」(投資枠30億円)を設立し、第1号投資案件としてサプリメントサーバー開発の「ドリコス株式会社」(神奈川県横須賀市)に出資した。2017年6月には、ドリコスと包括的業務提携を取り交わし、具体的な共同事業について合従連衡を図っている。
同社が資生堂ベンチャーパートナーズを設立したのは
①M&Aに対して高いプレミアムを支払っているケースが増えるなどM&Aの見直しに迫られたこと
②自社以外の技術やアイデアを組み合わせながら「美」に関する革新的な商品・サービスを創造する「オープンイノベーション」を推進していくこと
③中長期的にこれから成長していくベンチャー企業に対してスピード感を持って投資の意思決定を行えるようにすることなどの理由による。
こうした基本方針のもと資生堂ベンチャーパートナーズは、資生堂本体の既存の決裁プロセスではなく、決裁者である社長直下のダイレクトな意思決定プロセスを採用。これによって社内各部門との調整、投資決定などについてスピード感を持って検討、実行できるようにした。
株式会社マンダム(大阪府大阪市)は、合同会社ウェルネスオープンリビングラボ(大阪府大阪市、名称=WOLL、2017 年2 月設立)の事業目的に賛同して2017 年6 月に出資参画した。
WOLL は、大阪市立大学元学長の児玉隆夫氏を代表社員とし、認知症などの健康科学関連の課題解決に賛同する14 社が出資する合同会社。
同社がWOLLに出資参画したのは、産学官の連携による健康科学関連の最新研究とオープンイノベーションにつながるネットワークづくりに努めることで、同社の事業に結びつける狙い。
同社の動きは、資生堂と違って自社内にCVCを組織化してベンチャーに投資を行う形態は採っていない。健康科学分野の強化を狙いに、外部の技術開発を誘導するオープンイノベーションの活力を求めて出資参加したもの。
ともあれ、オープンイノベーションを目的としたCVC設立によるベンチャーの青田買いは、化粧品業界においてきわめて稀有な存在として覆っている。
もはや化粧品を含めて本業だけで事業をやっていく時代ではなくなった。新しい価値・事業の創造には、自社の経営資源(リソース)だけではやっていけない。ベンチャーなど他者の技術を活用して協業化を図る「共創」の時代に入った。