大阪ガス、ケトン体3HB素材を化粧品市場にサンプル提供

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2017.11.7

編集部

大阪ガス株式会社(大阪府大阪市)は、ヒトの体内で生成され、糖より分解が早く代謝を促進する物質「ケトン体」の一種である「β-ヒドロキシ酪酸」(3HB)が自社の実験で、コラーゲンを産生する酵素を活性化し、老化した線維芽細胞のエネルギー産生量などを増やすことを突き止めた。

同社は、エネルギー技術研究所において化粧品で汎用されているL乳酸より炭素が1つ多い「β―ヒドロキシ酪酸」をヒト肌細胞に作用させたところ、肌のうるおいを保つタンパク質「コラーゲン」の生成を担う酵素の働きを活性化し、老化した線維芽細胞のエネルギーとコラーゲン産生量を増やすこと。同時に、紫外線などの酸化ストレスにさらされてシミの原因となる色素「メラニン」を発生させる酵素の働きを抑えて肌を保護する効果を確認した。

老化誘導した繊維芽細胞の細胞賦活試験は、新生児由来ヒト皮膚繊維芽細胞を使い、過酸化水素含有培地で4日間処理して老化誘導細胞を作製。その後、細胞を96ウエルプレート(平板からなる実験・検査器具)に2・0×10・4CeLL/weLLになるよう播種し、0~100PPMの3HBを添加して培養細胞の生存率や増殖率を試験するMTT法(アッセイ)による試験を行った。
MTT法による測定は、脱水素酵素の補酵素として機能し、酸化型および還元型 の2つの状態を取る「NADH」(代謝の中核をなす電子運搬体)によりMTTから人工的な色素「ホルマザン」に還元される量を540ナノメートルと660ナノメートルの吸光度差で測定した。その結果、老化誘導細胞に3HBを添加するとMTT還元量は約20%回復することが判明した。図に細胞賦活作用を示す。

繊維芽細胞の細胞賦活試験と合わせて老化誘誘導した繊維芽細胞のコラーゲン産生促進試験も行った。
コラーゲン産生促進試験の評価法は、新生児由来ヒト皮膚繊維芽細胞を用いて過酸化水素含有培地で4日間処理して老化誘導細胞を作製した後、細胞を96ウエルプレート(平板からなる実験・検査器具)に2.0×10.4CeLL/weLLになるよう播種した。播種して24時間後から3HBを添加し24時間、48時間培養を実施して培養上のコラーゲン温度を測定した。
その結果、線維芽細胞のコラーゲン産生量を550ppm添加した場合、24時間後に約15%コラーゲン産生量が増加。また、1000ppmでは、24時間後に約30%のコラーゲン産生量が増加したことが明らかになった。図にコラーゲン産生量を示す。

同社は当初、エネルギー技術研究所で3HBを使って生ごみ用のごみ袋を生産し、使用後はバイオガス化する研究をしていたが、産業技術総合研究所との共同開発を経て微生物のハロモナス菌を活用してバイオ3HBの生産技術を確立した。ハロモナス菌を用いて発酵、精製することで、純度99%の3HBが低コストで1回当たり約1トン生産できる量産化技術を実現した。
折しも、ダイエットブームで美容効果が注目されたこともあり、実用化の目的を生ごみ用途から一転、化粧品や健康食品などの材料として活用することを決めた。

同社は3HBの販売について今年6月から化粧水や美容液の材料として化粧品メーカーなどにサンプル出荷している。同社では、本格的な受注活動による事業展開について「現在、サンプル出荷をしている最中。引き続き、サンプル出荷先からのフィードバック等、動向を見たうえで事業化の可能性を判断したい」としている。

参考リンク
大阪ガス株式会社

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