【連載】台頭する創薬・再生医療ベンチャー【13】JCRファーマ、ライソゾーム治療薬と細胞性医薬品開発に力

2014.02.6

特集

編集部

JCRファーマ(東証1部上場)は、オ―ファンドラッグ(希少疾病用医薬品)分野で独自のバイオ技術を駆使しながら新薬を開発するスペシャリティファーマとして成長を遂げている。今年(2014年)1月1日付けで旧社名日本ケミカルリサーチから現社名に変更した。現在、同社が総力を挙げて取り組んでいるのが有効な治療薬がない希少疾病領域のライソゾーム病治療薬と細胞性医薬品の開発だ。

ライソゾ―ムとは、細胞の中の“ごみ処理工場”のような役割をしている細胞内小器官のこと。細胞の内外の老廃物がこのライソゾームにある「酵素」で物質を分解・代謝する。ところが酵素が生まれつき欠損し、酵素の働きが低下すると分解される物質が老廃物として体内に蓄積し、さまざまな症状を引き起こす。この疾患をライソゾーム病という。欠けている酵素の種類により蓄積する物質や症状も異なる。現在までにハンター症候群、ファブリー病、ゴーシュ病など数十種類のライソゾーム病が明らかにされている。

同社は、2009年12月にバイオ医薬品に関する包括的な契約を結んだ英グラクソ・スミスクライングループと共同で開発に取り組んでおり「現在、国際治験の準備を進めている」としている。

一方、次世代の医薬品といわれる細胞性医薬品の開発は、移植片対宿主病(GVHD)向けに開発しているもので、臨床試験の段階に入った。開発中の細胞性医薬品は、健康なドナーから採取した骨髄液を培養して製造したヒト間葉系幹細胞(MSC)を通常の医薬品と同様、不特定多数の患者へ投与することが可能。また、MSC製剤は、あらかじめ製造して凍結保存ができるため、緊急時に即応できるなど利便性が高い。

現在、臨床第2相から第3相の開発ステージにあり白血病などの治療法である造血幹細胞移植を受けた場合にみられる「移植片対宿主病」(GVHD)と闘う患者へ届けるために、早期の承認取得を目指す。

同社では、2013年度中に治験を完了し、2014年度に承認申請、2015年度に市場投入する予定。さらに、再生医療分野で骨芽、脂肪、筋、軟骨の細胞など間葉系に属する細胞への分化能を持ち骨や血管、心筋の再構築など再生医療への応用が期待されている他家間葉系幹細胞を使って造血幹細胞移植時の合併症「移植片対宿主病」抑制の開発にも取り組む。現在、第2相から第3相の臨床試験段階にある。

成長ホルモン製剤「グロウジェクト」現在、同社の主力製品は、成長ホルモン製剤「グロウジェクト」(写真)と腎性貧血治療薬「エポエチンアルファBS」、白血球減少症治療剤「ロイコプロール」などがある。

「グロウジェクト」は、専用新型電動式注入器および効能追加による販売数量の伸長が年間を通して寄与している。また「エポエチンアルファBS」は、同社の株主キッセイ薬品工業との販売促進活動の成果が表れ、売り上げ拡大がさらに見込める状況にある。

こうした主力製品の好調を映して今期(2014年3月期)の業績は、売上高前期比12.1%増の158億円。また、研究開発費を含む販売費の増加が見込まれるものの増収効果により営業利益は、同36・5%増の15億7000万円、当期純利益同68.5%増の12億3000万円を見込んでいる。

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JCRファーマ株式会社

 

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