【連載】幹細胞化粧品開発元年【3】富士フイルム、幹細胞化粧品開発の姿見えず(下)

2015.09.15

特集

編集部

富士フイルム株式会社(東京都港区)は、米セルラー、J-TEC3社による三位一体型で再生医療の開発を推進する。3社による再生医療のシナジー効果として ①富士フイルムの細胞外マトリックスと組み合わせて細胞の3次元化による高機能化により創薬支援領域を拡大する ②J-TECの再生医療製品で培われた製品マネジメントシステムと組み合わせ、細胞治療用のiPS細胞のバンキングや培養受託を開発する ③3社の技術を組み合わせて3次元細胞構造化した臓器を移植する臓器再生医療を開発する。特に、創薬支援で開発された技術を再生医療に還流することを狙う。

こうした再生医療研究の中で、肌の再生力を高めるスキンケア技術を開発し幹細胞化粧品の商品化に繋げる取り組みは現段階で今ひとつはっきりしない。

同社が異業種から化粧品分野に参入したのは、2006年秋。本格進出は2010年9月にスキンケア化粧「アスタリフト」を市場投入したのが始まり。

アスタリフトの開発は、フィルムの原料として活用していたコラーゲン(基底膜と真皮に張りめぐらされている繊維状のタンパク質)が肌の弾力を維持する役割を担っていることに着目。しかし、加齢や紫外線によってダメージを受けると肌のハリが失われ、シワや色素沈着(シミ)の原因となっていた。そこで同社は、長年研究してきた写真の色あせを防ぐ抗酸化技術や写真用粒子の細かな機能や安定性を高める独自のナノテクノロジーが、コラーゲンを守るために有効な成分の選択や機能アップに応用できると判明。

技術開発や商品化を図るためのプロジェクトとしてR&D統括本部医薬品・ヘルスケア研究所とヘルスケア事業統括本部ライフサイエンス事業部が、ナノフォーカス技術を用いたセラミド分散液「ヒト型ナノセラミド」技術やフィルムの技術・研究で培ったアスタキサンチン乳化物(原料)をつくる乳化分散技術を応用するなどして実用化した。

アスタリフトに続いて2012年10月には、R&D統括本部医薬品・ヘルスケア研究所と先端コア技術研究所、画像技術センターなどが連携して光解析技術、ナノ化技術を開発して「ルナメア」の商品化を図り、化粧品事業の拡大を一挙に推し進めた。

すでに同社は、フィルム研究で培った基盤技術を医薬品、再生医療、医療機器、化粧品などを診断、治療、予防分野などに拡大し、総合ヘルスケア事業の要諦を確立(図)している。しかし、予防分野のカテゴリーに位置付ける化粧品、それも焦点となっている皮膚幹細胞(幹細胞の1つ)などへの化粧成分の作用機序の取り組みや幹細胞化粧品開発の動きが見られない。

フィルム技術を再生・ヘルスケア領域に拡大

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