【連載】幹細胞化粧品開発元年【7】花王、メラニン色素の生成メカニズムを解明(中)

2015.10.6

特集

編集部

花王、メラノサイトの情報伝達物質花王は、皮膚性状の指標として血管力が有効であることや血管内皮細胞の機能性向上など血管を対象とした研究に加えてシミ、シワ、たるみなど皮膚科学の研究において大きな成果を生み出している。中でもヒトの色素細胞(メラノサイト)の成熟、増殖、減少といったライフサイクルが「血管収縮物質」(エンドセリン)と「幹細胞増殖因子」(SCF)を中心とした情報伝達物質によりコントロール(データ図)されていることを解明した。

これまでの皮膚科学の研究の中で、シミの生成を抑える美白剤を開発する上で、紫外線による色素沈着は表皮から産生させる血管収縮物質「エンドセリン」(21個のアミノ酸からなる生理活性タンパク質)が関与していること。さらに、表皮の幹細胞増殖因子(SCF)もシミの形成に大きな役割を果たすことを解明した。

皮膚に紫外線が当たると初期にはSCFが、後期には血管収縮物質「エンドセリン」がそれぞれ色素細胞を活性化させ、メラニン生成を促進することを突き止めた。

同社は、シミや美白などの皮膚科学へのアプローチについての研究は、メラノサイト内のチロシナーゼ酵素の活性やメラニン生成の抑制などのアプローチに加えて、メラノサイトと皮膚の中でメラノサイトを取り囲むように存在する角化細胞の両者に着目した研究を進めてきた。

その結果、角化細胞からメラノサイトにメラニン生成を指令するメカニズムを発見。これらの研究をもとに、情報伝達物質のエンドセリンの働きを抑制する成分「カモミラET」とSCFの働きを抑える抑制剤を開発した。

一方、シミの根本的な原因や皮膚疾患の解析を行うためには、メラノブラストやメラノサイトを培養する技術の確立が必要となった。
そこで同社は、千葉大の研究グループと共同で、皮膚に本来備わっている生理的物質のみを培養液に加え、メラノサイトやその前駆細胞であるメラノブラストを純粋培養する技術を確立。この方法によって皮膚に、より近い条件で情報伝達物質の影響を評価することを実現した。

こうした生体に起こるトラブルを解決するため、生命現象の根本的なメカニズム解明に取り組み、新たな美白技術や皮膚疾患の解析などに応用している。

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