【連載】開花するか遺伝子(DNA)ビジネス(3)DNAチップ、病状、副作用などを解析

2013.04.4

特集

編集部

DNAチップ、病状、副作用などを解析

現在、遺伝子検査・解析装置や受託検査ビジネスに加えてビジネス商戦で注目されるのがDNAチップビジネス。
DNAチップ(DNAマイクロアレは、遺伝子やたんぱく質、糖鎖などのバイオ分子を基板上(シリコンガラス)に多数、固定したDNAチップとバイオ分子に特異的に作用する特定分子や化合物を大量かつ同時に検出できる半導体技術を使って作製したデバイス。
製造法は、基板上でDNAの配列が重合した分子(オリゴヌクレオチド)を基板上で人工合成する「合成法」(欧米企業採用)やDNAの断片をピンやインクジェットで基板上に打設して固定する「スポッティング法」(日本企業採用)で製造する。
このような製造技術で作製したDNAチップは、細胞内の遺伝子の活性状態や遺伝子の違いを見分ける(遺伝子発現)ことで、病気の症状、薬効、副作用などの解析による創薬、新薬開発の有力なツールとして使われている。

 病院、製薬などに売り込み攻勢

最近では、微生物やウイルスの遺伝子を調べることで、インフルエンザウイルス、ヒト・パピローマウイルス(子宮頚がん)などの型判定に使用されている。また、食品の遺伝子配列を検査してブランド判定や微生物汚染の検出などにも使われるなど新たな広がりを見せている。
こうしたDNAチップについて合従連衡による開発競争と合わせて主力ユ―ザーの大学病院、医薬・製薬企業医療研究機関などに対する受注競争が激しさを増してきた。
子宮頚がんの原因とされるヒト・パピローマ・ウイルスの型を13種類判定できるDNAチップを開発した東芝は、厚労省から国内初の製造承認(2009年7月)を取得し、共同開発の積水メディカルを通じて拡販中。
同社のDNAチップは、DNAに挿入剤を結合させて化学反応を起こし、電流の流れを検出することで、DNA判定する独自開発の電流検出型の方式を利用したもの。一般的な蛍光検出型に比べ装置の小型化、測定時間の短縮が図れるのがミソ。自社で保有する電子回路や半導体技術を駆使して研究拠点新デバイス開発センタ―で開発した。
同社では、DNAチップをバイオテロなど医療用途以外の分野でも利用できるようにするため、遺伝子検査のプラットフォーム構築に乗り出しておりDNAチップで主導権を握る構え。

遺伝子発現解析や遺伝子を構成する塩基「SNPSS解析」(ス二プス=一塩基多型)などのDNAチップ検査受託事業に参入したモリテックスは、横浜テクニカルセンター内にGLP(優良試験所規範に準拠した試験施設)対応のリサーチセンターを設立。㈱イベリカ(福岡市)と業務提携して新たに薬物代謝や薬物応答に関連した遺伝子解析検査「ファ―マコゲノミックス」(PGX=)の受託臨床試験分野に参入した。現在、製薬、農薬、食品などの主力ユ―ザーにターゲットを当てて受注拡大に取り組んでいる。
同社は、PGXの受託臨床試験を含むバイオ関連事業を経営の第二の柱に位置付けており現在、10億円の売り上げ規模を2006年度までに25億円に引き上げる計画。

DNAチップの販売と受託解析サ―ビスをメイン事業に展開するDNAチップ研究所は、新たな研究受託事業としてDNAを構成する塩基の並列を高速で読み取る装置「シーケンサ―」を使って遺伝子の変異特定や構造を解析する受託サービスを本格的に取り組む。同時に、今後の個人化医療を見据えてウイルスの遺伝子(RNA)診断用DNAチップとコンテンツ開発を公的病院、大学などと共同で推進し、診断ビジネス拡大に繋げる。
2013年3月期業績は、受託解析サービスと診断事業の拡大による研究受託事業を中心に売上高約4億円、純損失2005百万円。
DNAチップの用途は今後、食品の遺伝子配列を検査して機能性食品の開発や牛のブランド判定、微生物汚染の検出など医療領域以外に一段と広がりを見せる。
東芝は、バイオテロのウイルスを検出・判定するDNAチップを科学警察研究所と帯広畜産大学と共同で開発し警察、消防、空港、鉄道向けなどに受注をかけている。
Jパワーは、トランスジェニックと共同で、DNAチップを使って内分泌かく乱物質(環境ホルモン)を測定するビジネスを開始するなど今後、新規用途の拡大が一段と進む。こうしたDNAチップを使った検査ビジネスをグローバルに展開するためには、日本の遺伝子検査技術が国際戦略上、世界の標準規格になることが必修。

DNAチップの国際標準化については、電機、電子メーカーなどが参画して設立した「日本マイクロアレイコンソーシアム」が中心となってDNAチップの精度測定やサンプルの前処理、データ解析、判定方法、手順などの標準化をまとめISO(国際標準化機構)に提案し、事実上のグローバルスタンダードになっている。今後、国際標準化を足掛かりに国内参入企業の海外展開が本格化しよう。また、日本は、次世代型ナノバイオチップの開発で世界をリードする。
ナノバイオチップは、生体機能を担うタンパク質にターゲットを当てタンパク質解析のための抗体チップとウイルスチップを開発して化合物(薬剤)や創薬開発に繋げる狙い。すでに大阪大学を中心とした産学官共同開発プロジェクトがスタートしており2015年度までに実用化にメドをつける。

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