【連載】化粧品・美容関連ベンチャーの考証㉙リーマンショック後に化粧品会社の上場相次ぐ

2017.05.19

特集

編集部

リーマンショックで化粧品の需要に盛り上がりが欠ける一方で、株式公開する企業が極端に減少するなど日本経済が大きく停滞した。通常であれば日本経済が停滞した場合、ベンチャー企業の輩出で経済を押し上げるが、ベンチャーの株式公開の意欲はみられなかった。リーマンショックで軒並み、金融機関が破たんし、ベンチャーに投資する余剰資産が喪失したことが大きい。

化粧品会社の上場が散発的に見られたのは、1990年に株式会社ハウスオブローゼ(東京都港区)が当時の店頭市場に上場したのに続き、株式会社アイビー化粧品(東京都港区)と株式会社ミルボン(大阪府大阪市)両社が1996年に店頭市場に上場。以降、2009年に美容家電のヤーマン株式会社(東京都江東区)がジャスダックに上場するまで化粧品会社の上場は、空白状態が続いた。表に、主な化粧品各社の上場時期、市場等を示す。

化粧品の上場が顕著になったのは、金融機関が保持していた金融派生商品の処理が進んだ2000年から2013年の13年間で、この期間に上場した化粧品・美容関連会社は6社にのぼる。このうち、ベンチャーの上場は、株式会社アジュバンコスメジャパン(兵庫県神戸市)と株式会社ビューティガレージ(東京都世田谷区)の2社に過ぎない。

化粧品ベンチャーの輩出が極端に少ない中にあって化粧品・美容系総合情報ポータルサイト「アットコスメ」を運営し、化粧品に加えて美容マーケット全体をカバーするプラットフォームを構築した美容系ネットベンチャー「株式会社アイスタイル」(東京都港区)の上場が大きく注目された。
同社は、2012年3月に東証マザーズに上場し、8ヵ月後の同年11月に第1部に上場した成長企業。特に、同社が東証マザーズに上場する原動力になったのは、中小機構のファンド出資に負うところが大きい。
中小機構の前身である中小企業総合事業団は、サンブリッジを無限責任組合員とした「サンブリッジ・テクノロジーファンド2002投資事業有限責任組合」に対して2003年6月に5億円のファンド出資を行って出資総額10億円のファンドを組成した。
同社は、このファンドの中から累積赤字を補えるファンドの適用を受け、上場の足掛かりをつかんだ。

こうした「アイスタイル」のケースに見られるように、VCが組成するファンドに中小機構が有限責任組合員としてファンド総額の約6割の出資を行ってVCのファンドを組成しやすくした。また、そのうえで、株式公開が確実なベンチャーに対して投資を優先するなど、今日において中小機構のファンド事業は、VCのベンチャーへのハイリスク投資を回避することと合わせてベンチャーへの資金供給に大きな役割を担っている。

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