【連載】大手化粧品会社の研究㊾琉球大学発ベンチャー グランセルの会社研究 ~脂肪幹細胞ストックプロジェクト事業に共同参加~(下)

2018.09.13

特集

編集部

琉球大学発ベンチャーのグランセルは、再生医療分野の新たなプロジェクト「脂肪幹細胞ストック事業」に取り組んでいる。
同事業は、脂肪組織由来幹細胞を琉球大学医学部附属病院などで採取・抽出し、品質・安全性評価や保管システムを構築することで、高品質・安全な幹細胞を供給できる体制を確立するもの。
同事業は、沖縄県および琉球大学医学部が掲げる「沖縄バイオインフォメーションバンク構想」の重要な柱の一つ。
同プロジェクトには、琉球大学医学部が研究を主導し、グランセルをはじめ国立成育医療研究センター、産業技術総合研究所などの学術機関およびセルソース株式会社(東京都港区)、株式会社エムティーアイ(沖縄県中頭郡)、一般社団法人トロピカルテクノプラス(沖縄県うるま市)等が参画している。

事業の目的として①脂肪幹細胞をストックするための研究基盤構築、②脂肪幹細胞の品質を評価できる基盤技術の開発を行う。
①は、被験者から適切な同意を得て統一された規約(プロトコール)により脂肪組織を採取し、琉球大学医学部の細胞培養加工施設(CPC)もしくはセルソースのCPCにおいて脂肪幹細胞を抽出する。セルソースにおいて抽出した脂肪幹細胞は、琉球大学医学部のCPCに輸送し、抽出した全ての脂肪幹細胞を琉球大学医学部CPCにおいて長期間ストックするなど、脂肪幹細胞を安全にストックするための技術基盤構築を行う。
②は、異なる被験者から得られた脂肪幹細胞について、さまざまな分析項目において細胞の性能・品質を評価し、安定した治療効果を発揮する細胞を得る基盤技術の開発を目指す。

具体的には、①によりストックされた脂肪幹細胞に加え、一部市販の脂肪幹細胞等の網羅的遺伝子発現解析を国立成育医療研究センターや産業技術総合研究所にて行う。
一例として求める細胞の性能を「血管形成能」に定め、脂肪幹細胞の有する血管形成能を測定する。
網羅的遺伝子の発現解析と血管形成能の相関を解析することにより、個々の脂肪幹細胞の品質(血管形成能)を評価する遺伝子マーカーを抽出し、評価基盤技術として確立する。

脂肪幹細胞を用いた再生医療や幹細胞コスメを普及させるためには、多くの脂肪幹細胞をストックして個人のデータを多面的に解析する必要がある。しかし、現状は、被験者から適切な同意を得て脂肪幹細胞を採取し、安全・高品質の状態で長期間ストックする基盤整備がされていない状況にあった。
そこで「脂肪幹細胞ストック事業」により、多様な性質を有する脂肪幹細胞を安全かつ高品質に安定供給することにした。

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