【連載】大手化粧品会社の研究(74)クレコスの会社研究 ~農商工連携で自然派化粧品「クオン」開発~(上)
2019.01.28
編集部
株式会社グレコス(奈良県奈良市・代表取締役会長 暮部恵子氏、未上場)は、1993年に奈良市で法人を設立し、自社ブランドでオーガニック化粧品の「クオン」(写真)と「クレコス」の2つのブレンドを製造販売する化粧品メーカー。
同社は、米ぬかの発酵エキスやヘチマ、植物種子油など国産、無農薬、有機栽培といった自然原料にこだわって化粧品開発に取り組んできた。
自然派化粧品の「クオン」シリーズは、自然原料にこだわった代表的な開発商品。2010年6月に6次産業化を推進する国の補助事業「農商工連携事業」の認定を受けて実用化した。
クオンシリーズは、奈良の地場産品「大和茶」の再生を目指して取り組む健一自然農園(奈良県大和郡山市)と共同で開発した自然派化粧品。
「自然農法で栽培する大和茶の葉も実も花も全部使った化粧品をつくる」というコンセプトを掲げながら自然農による茶を育て、葉っぱからは有効成分を抽出して化粧水や乳液、美容液などのエキスに利用。実は、搾油してせっけんや化粧用油として活用。花は香りのエッセンスとして利用した。また、プロジェクトには、近畿大学農学部から栽培指導を受けて収穫量や有効成分の含有量を増やす取り組みを行う一方、静岡県立大学にも亜臨界水抽出という特殊な方法による原料抽出技術でサポートを受けた。
亜臨界水抽出法は、気圧と温度を調整し、水だけを媒体として必要な成分を効果的に抽出する方法。
クオンの実用化は、事業開始から2年目の2011年9月。オールインワンタイプの化粧水・乳液・美容液と2種類のオイルエッセンスを開発し販売した。同年11月には、保湿効果に優れたもう1種類のオイルエッセンスを開発して「クオン」ブランドを立ち上げた。
現在、クオンの販売は、クオンのブランドサイトを立ち上げネット販売と百貨店、量販店などの取扱店舗約45店舗で販売している。また、製品ターゲットは、20―30代の女性。価格も3000―4000円で比較的安価に設定している。
課題は、自然派化粧品「クオン」ブランドを今後どのような戦略で、顧客に浸透を図り業績の向上に繋げていくかが、問われる。
自社の経営羅針盤「中期経営計画」を立案し、多くのステークホルダーに開示して企業の進路について具体策を提示し、協力を得る努力も必要だ。
一段と業績を伸長し成長発展の軌道に乗せていくためには、中小企業とはいえ、戦略・戦術を盛り込んだ経営の羅針盤は必要不可欠である。